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ああ…麗しの吉本興業……

「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回


子供の頃から憧れていた吉本

ことの発端は、吉本興業の契約形態の変化だ。

今までの吉本は、すごく懐の広い会社で

本来は会社の仕事だけをやってもらいたいのだけど、それだけだと所属の落語家を食べていかせることができないので

いい意味でグレーゾーンというか

「ある程度までは、見て見ぬふりしまっせ。売れた時は、そのへんもきっちりしてもらいまっさ」

と、取り立ててマネジメントはしないけれども、自由にして構わないというスタンスだった。

それがここへ来て、急な契約形態の変更で

「まあまあ構いまへんがな」

といっていた大阪のおっさんが

「これからの仕事は会社を通してしっかり契約致しましょう!!」

と急にネクタイを締めたスーツのビジネスマンに変わってしまったのだ。

大阪の吉本落語家(といっても、東京所属は僕しかいないのだけど)に大激震が走った。

具体的な契約内容は明かせないが

吉本にすべての仕事を通してしまうと、もしかしたら今までいただいていた給料よりかなり少なくなってしまうのではないか

という不安で、大阪の落語家の心は揺れ動いた。

といっても、大阪の落語家のほとんどは吉本から仕事をもらっていない。

下手したら年間に数本? もっと極端な人になると数年に1回、仕事をもらう程度のお付き合いしかしていない落語家もいる。

合理的に考えたら

「そんなん辞めてもなんの支障もないやん? なんでやめへんの?」

と思うかもしれないが、そこで辞められないのが冒頭に書いた

「吉本至上主義」に対するマインドコントロールなのだ。

お笑い=吉本

おもろい=吉本

吉本を辞める=おもんない芸人

このような図式になるのじゃないかと、恐ろしくなるのかもしれない。

小さい頃から吉本に染まったまま、大人になり

憧れの吉本に入り

そしてついに選択を迫られる……。

割と吉本に面倒を見てもらってきた僕でも

近年は、自分の仕事と吉本の仕事の割合は

95対5。

合理主義者の僕でも、頭では「所属し続けることにメリットはない」

とわかっている。

ただ頭ではわかっているけど、心が吉本に残りたがっているのだ。

うまく行かないとわかっていて、周りから反対されても別れられない恋人に似ている……。