ああ…麗しの吉本興業……
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
- 落語
桂 三四郎
2026/05/12
闇エッセイ
人情を大事にするグレーゾーンに寛容な吉本が、白黒はっきりつける契約形態のしっかりした会社に変わってしまった。
この原因も元を正せば、あの日本中の話題をかっさらった「闇営業問題」が発端だ。
あそこでM迫さんたちが大立ち回りをしたことがきっかけで
吉本の曖昧な契約状態が炙り出され、そこから、まずは漫才師に対して締め付けが厳しくなり
吉本と落語家との間にも徐々に微妙な空気が流れ出していた。
吉本も世間からの風当たりが強くなり
全所属タレントに現在の仕事の実態調査ならびに反社会勢力との繋がりがないかを確認することとなったのだ。
その時も、吉本所属の落語家の中から
「もしかしたら、これからは吉本に仕事全部通さなあかんようになるかも?」
「契約とかややこしいことになるなら、辞めよかな……」
「今の仕事を全部、闇営業扱いされたら、かなわんなあ」
という不安の声がちらほら漏れてきていた。
「闇営業」というのは、もともと会社を通さない芸能活動という意味なのだけど
僕の場合は95対5の割合なので、どっちが闇で、どっちが光かわからない。
もちろんこのエッセイも吉本を通していなかったので、「闇エッセイ」だ。

この件で会社に呼び出され、聞き取り調査を行うこととなったのだけど
もし「今の仕事を吉本に通せ」と言われたら、思いっきり喧嘩しようと思っていた。
その当時は、僕が取ってきた仕事を吉本に振ってマージンを取られるということも多々あって、僕の中でも不満が高まっていたのだ。
何が闇営業じゃ!! 大崎(当時の会長)出てこい!! 岡本(当時の社長)出てこい!! こんな会社辞めたるわい!!
と意気込んで吉本本社の会議室へ。
もちろん、大崎会長、岡本社長がいるはずもなく、担当の社員と書記係の社員がいるだけだった。
目が充血しきったヨレヨレになった社員さんが
「あー……、今回の報道の件でー……。全タレントのー……。仕事の実態、ならびにー……」
と麻薬中毒者のような虚な目で文言を並べていく。
おそらく、この社員さんが東京所属の全タレントの聞き取り調査を任されているのだろう。
どう見ても睡眠時間が足りなさすぎて、疲労困憊、精神的にも肉体的にも限界を迎えていた。
迷惑を被っているのは芸人だけじゃなく、社員さんも同じなのだ。
「えー……。今の……。仕事の実態を……。教えてください……」
社員さんは、今にも息絶えそうだ。
「まあ、メディアの仕事は吉本を通して、小さな落語会は細々とやってます」
カチャチャチャチャ、カチャチャ、カチャチャ、カチャチャチャ
僕の言葉を書記の社員さんが漏らさず打ち込んでいく。
「えー……、反社会勢力との付き合いについてですが……。今まで、そういった人と仕事をしたことはありますか?」
「いや、全くないです」
カチャ、カッチャチャチャ
書記の社員さんは、一言も漏らさず打ち込んでいく。
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