ああ…麗しの吉本興業……
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
- 落語
桂 三四郎
2026/05/12
キラリと光る目
「じゃあ、プライベートなことをお聞きしますが、夜の繁華街に行かれてませんか? 麻布、六本木、川崎……」
川崎? 麻布、六本木はなんとなく夜の危なそうな空気は感じるが、川崎?
ラゾーナの街・川崎?
そんなに危ない街だったのか川崎?
というか、もし僕が川崎に住んでいたらどうするんだ?
それだけで反社認定なのか?
「川崎?」
思わず聞き返した。
すると書記係が漏らさず
カチャチャチャ?
キーボードまで『川崎?』と疑問を持っているような音を立てた。
「ほかにも意図せず、そういう方と同席してしまったことはありますか?」
そう、立ち寄った店でたまたま反社の方がいて、知らずに同席してしまったり、写真を撮ったりということは、ないこともない。
そして何を隠そう、僕も一度だけそういう経験がある。
とある街の小さなお店に初見で行った時に、たまたま後からやってきたお客さん。
100人に「この人の職業はなんでしょう?」と聞いたら
100人全員が「ヤ○ザ」と答えるであろう
Vシネマから飛び出してきたような風貌の方が隣に座って話しかけてきたのだ。
そのことを伝えると、今まで疲労困憊、精も根も尽き果てようとしていた社員さんの目がキラリと光った。
何百人も面談してきて、誰一人反社との繋がりもなく
なんのためにやってるのかわからなくなっていた時に、ついに当たりを引いたのだ。
急にボルテージが上がって
「その男は反社ですか!?」
「僕も勇気を出して『ヤ○ザじゃないですよね?』って聞きました!!」
カチャチャチャ、カチャッチャチャッチャッチャ、チャチャチャチャ!!
心なしかキーボードの音もテンションが上がっている。。。
「その男は、なんて言ったんですか!?」
「はい!! 『ヤ○ザじゃないチュセヨ~』って言ってました!!」
チャチャチャチャン、チャチャチャン
書記係が大事な報告書に「ヤ○ザじゃないチュセヨ」。
「ヤ○ザじゃないチュセヨ……」
「はい、『ヤ○ザじゃないチュセヨ』」
チャチャチャチャン、チャチャチャン。
「ヤ○ザじゃないチュセヨ……」
「はい、『ヤ○ザじゃないチュセヨ』」
チャチャチャチャン、チャチャチャン。
そう繰り返されるたびに大事な報告書に
「ヤ○ザじゃないチュセヨ」
が記載されていく。
こんな報告書で本当にいいのか?
「ヤ○ザじゃないチュセヨ……。うーんまあ……。大丈夫でしょう……」
いやオッケーなんかい!!
まあ、反社じゃないと言質を取っているし
ほとんど話さず逃げるように退散したので、問題あるはずもないのだけど。
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