弟子になる
「コソメキネマ」 第十三回
- 浪曲
港家 小そめ
2026/05/23
ちょうどその頃、浪曲協会で浪曲三味線講座が始まっていて、そちらに通っておりました。講師が沢村豊子師匠。三味線にも興味はありましたが、どちらかというと豊子師匠の三味線が至近距離で聴けるかも!という、やや不純な動機の方が強かった気がします。
その教室に来ていた方が「今度、小柳師匠の会を開く」と言って、チラシを配っていました。四回しか聴いていないにも関わらず、もうすっかり小柳師匠の虜になっていた私は小躍りして「絶対行きます!」と言い、そして迎えた9月1日、口演の日です。今はなくなってしまいましたが、渋谷のLi-poというお店でした。
口演が終わると、小柳師匠を囲んでの打ち上げがありました。なんとかしてお近づきになりたい一心で、師匠の横の席に座り、ドキドキしながら「浪曲とか教えたりされていないのですか。教えていただきたいんですけど」と話しかけると、師匠は、ちょっと困ったような笑顔で「教えるっていっても……な、どうしようか……ハハハ」という曖昧な返事。
その時です。
「あんた、浪曲師になるのかい?」というはっきり大きな鋭い声が師匠の向こう側から聞こえてきました。茶色のグラデーションのサングラスをかけた小柄な結構年配の女性。その後、深いお付き合いになる、当時90代前半だった曲師の玉川祐子(たまがわゆうこ)師匠でした。正直グラサンだし、ものすごく威勢が良いし、怖かった。
そう言われて、正直そこまで考えておらず、そうか、習うということは浪曲師になるということなのか!? でもここで断ったら小柳師匠との縁が切れちゃうなー、それは残念すぎるーーー!ということを5秒くらいの間に考えた私は、とりあえず「はい!」と元気よく返事をしたのでした。
こうして私は、五代目港家小柳の弟子になったのです。
今回の映画は、『羽織の大将』です。フランキー堺演じる主人公、十文字忠夫が落語の世界に飛び込んでいく、千葉泰樹監督の作品。
千葉泰樹監督の映画は熱すぎず、寒すぎず、ちょうど良い温度の作品が多く、作品に出てくる人たちが愛らしい。兄弟子役の桂小金治師匠がもう……ほんとに良くて泣かされます。桂文楽師匠や安藤鶴夫先生も本人役で出演。名作です。
(文中、敬称略)

▼港家小そめ X
■今回の映画
羽織の大将
監督:千葉泰樹
脚本:笠原良三
出演:フランキー堺、 団令子、加東大介、桂小金治、柳家金語楼 ほか
公開:1960年(昭和35年) / 上映時間:107分 / 日本
▼羽織の大将 作品情報・キャスト・あらすじ(映画.com)
2026年6月のピックアップ公演はこちら。ご予約お待ちしてます!

第30回 若手“一文字”浪曲会
- 日程:
- 6月18日(木)
- 開場 18:30 開演 19:00
- 会場:
- ばばん場
- (豊島区高田3-5-2)
- →Googleマップ
- 出演:
- 港家小そめ(曲師 沢村博喜)
- 東家千春(曲師 沢村理緒)
- 天中軒かおり(曲師 沢村まみ)
- ※各一席とテーマトーク。今回の一文字テーマは「足」。
- 料金:
- 予約・当日 2,000円
- ご予約:
- ばばん場 公演予約フォーム
- → https://baba-n-ba.com/reservation.html
(毎月23日頃、配信予定)
前回はこちら
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