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人に負けないもの

「噺家渡世の余生な噺」 第18回

見切りをつけるには、まだ早い

 映画を見ながら、私はあの噺家仲間の顔を思い浮かべていた。

 噺家は、芸歴が20年近くになると、自分の立ち位置を考え始める。若い頃に思い描いていた将来と、現実は必ずしも一致しない。憧れていた先輩のようになれた者もいれば、思い描いた場所とは違うところに立っている者もいる。

 自分と似た芸風や性格の先輩を思い浮かべては、あの人のようになるのだろうかと考える。そして、いつしか挑戦を若い者に任せ、自分は自分の立ち位置を固めようとする。それも一つの生き方である。

 いつまでも若い頃と同じように走り続ければよいというものではない。だが、彼を見ていると、見切りをつけるにはまだ早いのではないかと思う。集客に苦労していると隠さずに言う。その一方で、落語以外の企画にも手を伸ばし、新しいことを始める。

 それは格好のいい姿ばかりではないだろう。失敗もする。批判もされる。思うように人が集まらないこともある。それでも、やる。その姿が私には眩しく見える。

 彼のチャンネルで公開された「集客」をテーマにした対談も、ほかの動画よりも再生数が多かった。もちろん、その理由を正確に知ることはできない。ただ、同じように集客に悩みながら、なかなか口にできずにいる噺家仲間が見てくれたのかもしれない。そう思うと、彼の告白にも意味があったのではないかと思う。

 自分の弱みをさらけ出すことは、必ずしも恥ではない。それを見て、少し気が楽になる人もいる。そして、何かを始めようと思う人もいる。