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余興について

「すずめのさえずり」 第九回

余興について

画:原田みどり

古今亭 志ん雀

執筆者

古今亭 志ん雀

執筆者プロフィール

 また、新しい真打の昇進披露宴の季節がやってきた。

 なるべく、ご招待いただいたものには伺うようにしている。なにしろてめえが普段飲まないゆえに、後輩を飲みに連れて行く、ということを滅多にしないから、このような時くらいしか義理を果たす機会がないのである。

 帝国ホテル、東京会館、上野精養軒、その他、各宴会場の贅を尽くした料理を「この収入でこんな物食ってたら、いずれバチが当たるのではあるめえか」という罪悪感とともにいただくのもオツなものであるが、毎回の楽しみといえば、なんといっても余興である。

 落語協会の夏の寄合でも、毎年の恒例として前座の余興がある。

 近年はレベルが上がってきて、うるさ方の先輩たちにもなかなかよくウケている。たいていは楽屋の師匠や先生がたのモノマネやそれに類するものであるが、今の子たちが物怖じしなくなったのかそれとも師匠たちが怖くなくなったのか、もう大先輩をいじることいじること!

 我々の頃は、全体にどことなく萎縮していたので、のびのびとした余興など望むべくもなく、それはそれは悲惨なものであった。

 そんな中で唯一いくらか健闘したのは、絵の描ける春風亭正太郎(現、柳枝)兄さん(落語を御存知ないかたへ。にいさんではなくアニさんと読んでください)が、即興で師匠がたの似顔絵を描いた年くらいであったろうか。

 前座になって一年目か二年目の寄合では、なぜかスイカの早食い競争をした。さすがにそれだけでは余興にならないので、兄さんたちも当然なんらかのオチは考えていたはずであるが、それはまったく記憶にない。

 たしか五、六人が並んで一斉にスイカにかぶりつき、一人が食べ終えたところでオチ……という流れだったはずだが、用意されたスイカが大きすぎ全員が途中で息切れ、という、もう目も当てられぬ有様になった。

 「さ、さあ~、誰が一番早いのか!」

 司会を務める兄さんの声だけが、静まり返った浅草ビューホテルに響く。