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かしましや カフェ見た俺の 帰り様

「朝橘目線」 第18回

かしましや カフェ見た俺の 帰り様

那須塩原のカフェに来店直後の私。まだ緊張が垣間見える

三遊亭 朝橘

執筆者

三遊亭 朝橘

執筆者プロフィール

 『長短』という落語がある。

 気の短い、せっかちな人と気の長い、悠長な人。正反対な二人のやり取りが面白い一席だ。特徴的なキャラクターではあるが、たった二人の会話だけ、場面転換もなく進行する噺なので、演者の力量がものすごく問われる。

 うまくやれば、野原家の茶の間で、ひろしとみさえの夫婦が会話するよりずっと面白いし、下手にやると腰が抜けるほどつまらない。非常に難易度の高いネタだと思う。私も一応、やったことはあるが、どうも怖くてまだじっくり向き合えていない。故・立川左談次師匠の『長短』はとても面白かった。

 私は、気が短い。自覚している。食べるのも早い。早飯早○、芸のうち。「食事の時間は、短ければ短いほど良い」と思っている。食事は出された瞬間が一番おいしくて、そこからどんどんまずくなる。すぐ食べるのが正しい。

 昨今は何でも写真に撮る。自分も撮る時はある。でも速やかに撮り終えて、即座に食べなさいよ。特にお高い寿司をカウンターで楽しむ機会があったら、気を付けてほしい。絶妙に握ったシャリの具合が、重力で変わるんだ。置かれたらすぐ食う。寿司を前にした人間は、入れ食い状態の魚でなければならない。

 食事を楽しみながら、ゆっくり話すのがいいんじゃない――。世間はきっとそう反論する。食い終えてから話せば良かろう。こないだ家族でピザを食べに行ったが、うちのもんときたら一切れ残ったピザを大皿に置いたまま、長々くっちゃべったりする。ピザの気持ちをまるで考えてない。

 「このへんのチーズが、いい具合にメルティーだったんだぜ、お嬢さん。そう、メルティーだった。過去形さ」
 「このテーブルに来た時は、俺だってちゃんとパリッとしていた。持ったらだらんと垂れ下がる? そりゃあ、がっくりくるぜ。生地も焼かずば垂れるまい、ってね」
 「あぁ、こんなことになるなら、あのお寒い冷蔵庫にいたほうがまだマシだった」

 延々と聴こえてくるピザの愚痴にうんざりする。「朝橘、お前がすぐ食えよ」って思うかもしれんけど、私のペースで食べ進めたら、のんびり屋の妻子は一口もありつけない。だから手加減する。そして愚痴ピザが残る。しかもこっちに回ってくる。

 「来世はできたて熱々のところを頬張ってもらえよ」と祈りつつ、ヘナヘナのピザを黙って飲み下す。食事というより除霊に近い。