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人に負けないもの

「噺家渡世の余生な噺」 第18回

人に負けないもの

槇原さんの歌に、何度も励まされてきた(Concert Tour 2024にて)

柳家 小志ん

執筆者

柳家 小志ん

執筆者プロフィール

集客力がないという告白

 2026年9月。

 ある会の開演前、噺家仲間の彼が、嘆くように話し始めた。直近の会の集客が思うようにいかないという。よほど、そのことが頭の中を占領していたのだろう。私が励ましや助言を挟もうとしても、それを遮って話し続けた。

 それから数日後、その会を終えた彼が世間にとんでもない爆弾を投げ込んだ。自分のYouTubeチャンネルで「集客力がない」と宣言したのである。嘆きというより、その姿は実に爽快で潔かった。

 噺家という商売は、芸を磨いていれば済むほど単純ではない。会を開けば、お客様に来ていただかなければならない。ところが、集客に苦労していることを正面から口にする者は、案外少ない。

 お客様の前では、忙しく、いつも大勢のお客様に囲まれているような顔をする。武士は食わねど高楊枝というやつである。私も偉そうなことを言える立場ではない。彼の動画を見て、すぐに励ましのメールを送った。

 そんなやり取りをしてから数日後、彼のチャンネルで「集客」をテーマに対談することになった。彼とは月に三度ほど「ひるま寄席」で高座を共にしている。災害復興寄席の企画・運営でも共に行動しているし、彼のYouTube番組にも出演させてもらっている。

 彼は落語で数々の賞を受け、寄席で10日間の主任も務めた。さらに鹿芝居などの企画を主宰し、落語雑誌の編集や落語協会の公式YouTube、謝楽祭の運営にも携わっている。よく動く男である。そして、何よりクリエーター気質だ。

 実は彼の姿には、私が目指してきたものと重なる部分がある。私の頭の中には企画がいくらでも浮かぶ。だが、それを実現する技術や、人を動かす力となると、なかなか思うようにはいかない。頭の中では、いつだって大きなことをやっている。小説も映画もイベントも、構想だけは実に景気がいい。

 頭の中では、すべて大ヒットし、すべて超満員である。