第十話 「オチログ」
「令和らくご改造計画」
- 落語
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
#4
「○べログって、あれだっけ?」
「はい。飲食店を星五段階で評価して、口コミを書き込む、あれです」
「そうだよね。それの『落語家版』って、どういうこと?」
「つまり、落語家をレビューできるアプリを作るんです」
「そんなアプリ、君に作れるの?」
「私には作れません。ですので算用亭でん吉(さんようていでんきち)兄さんに頼みます」
算用亭でん吉――。
以前、AI落語を作り出し、危うく落語の未来を滅ぼしかけた前座である。大学院でAI研究をしていたという異色の経歴を持つので、確かにアプリくらいならすぐに作ってしまいそうではある。
「で、それを作るとどうなるの?」
れびうは、待ってましたとばかりに説明を始めた。
「たとえば、飲食店のレビューに、こういうものがありますよね。〈○○ラーメン、星1.5〉」
「う~ん、ちょっと低いね」
「口コミは、〈味噌ラーメンを注文した。提供までが遅く、また味の質もあまり良くない。店内も汚かった〉」
「ありそうだね。店側が見たら落ち込むだろうなあ」
「これの芸人版を作るんです。兄さんなら〈三遊亭ごはんつぶ、星1.5〉」
「うわ、低い」
「口コミは、〈『子ほめ』を聞いた。導入までが遅く、また笑いの質もあまり良くない。所作も汚かった〉……こうなります」
「君次第じゃない? 架空の口コミで傷つけてこないでね」
苦笑いする僕をよそに、れびうは続けた。
「しかし、このように具体的な評価が集まることで、自分がどう人に見られているのかがわかります」
#5
間違ってはいないのかもしれない。確かに、自分の芸がどんなふうに受け取られているのかを知る機会は意外と少ない。
「そうして、自分はいろいろな人に楽しんでもらえる意識を持っているのかを問いかけるキッカケになるはずです」
「確かにその仕組みなら、一部の常連さんばかり喜ばせていても総合的には高い評価は得られないだろうね」
「その通りです。特に新規の方などが低いレビューを付ける落語家は、全体の評価が低くなっていきます。ですから、幅広い方に楽しんでもらおうと心がけるようになるはずです」
理屈はわからなくもない。しかし、そう簡単にいくだろうか。
「でも、そんなアプリを作ったところで、演芸ファンに浸透するかな」
れびうは、きっぱりと言った。
「します」
「言い切るね」
「演芸ファンには案外、節操がありませんから」
「おうおうおう?」
「いえ、冗談ですが。まあ、面白そうという理由で、すぐに広まるでしょう」
「そんなものかな」
「いまだに5ちゃんねるを見たり、書いたりしているような連中ですから」
「別に、全員ではないだろうけどね」
「それより、5ちゃんねるに張り付いている芸人ってなんなんでしょうか?」
「……うん。いろいろ言いたい気持ちはわかるけど、話を戻そうか」
「ああ、そうでした。別に、そんなヤツラのことはどうでもいいんです」
普段は真面目な前座さんだが、諸先輩方を「ヤツラ」呼ばわりとは、なかなか思うことがあるのだろう。
「えー、落語の食べログ、略して『オチログ』です。早速、でん吉兄さんにアプリを開発してもらいます」
そう言うと、れびうは楽屋を飛び出していった。
止めた方がいいのか。それとも、これは案外まともな改革なのか。判断がつかないまま、僕は彼女の背中を見送った。
いま読まれています!
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第13回
突撃リポート! 芸協らくごまつり&謝楽祭
~絶対に間違いない楽しみが、そこにはある!!
服部 拓也
2026/06/29
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「エッセイ的な何か」 第13回
6月26日は、露天風呂の日 →全裸のおじさんに囲まれた“おじさん”を見つめる男の苦笑
~湯けむりの向こうに、シュールな光景があった
三笑亭 夢丸
2026/06/24
「かけはしのしゅんのはなし」 第13回
6月21日は、えびフライの日
~えびフライ専門店は、夢のような場所だった!!
春風亭 かけ橋
2026/06/27
「マクラになるかも知れない話」 第十一回
梅雨ハザード
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/06/25
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第10回
同郷熊本の小学校の先輩! 三遊亭ふう丈 改メ 二代目円丈師匠真打昇進襲名披露パーティー
~真打昇進披露パーティー体験リポート①
服部 拓也
2026/03/22
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第12回
突撃リポート! 落語芸術協会・真打昇進襲名披露パーティー
~真打昇進披露パーティー体験リポート③
服部 拓也
2026/05/28
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「エッセイ的な何か」 第13回
6月26日は、露天風呂の日 →全裸のおじさんに囲まれた“おじさん”を見つめる男の苦笑
~湯けむりの向こうに、シュールな光景があった
三笑亭 夢丸
2026/06/24
「マクラになるかも知れない話」 第十一回
梅雨ハザード
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/06/25
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第13回
突撃リポート! 芸協らくごまつり&謝楽祭
~絶対に間違いない楽しみが、そこにはある!!
服部 拓也
2026/06/29
「かけはしのしゅんのはなし」 第13回
6月21日は、えびフライの日
~えびフライ専門店は、夢のような場所だった!!
春風亭 かけ橋
2026/06/27
「すずめのさえずり」 第十二回
牛乳の日(6月1日)に思う
~人生を巡るあれこれを、笑いとほろ苦さを交えて綴るエッセイ!!
古今亭 志ん雀
2026/06/26
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第14回
〈書評〉 新宿末広亭 令和の定点観測 (長井好弘 著)
~笑いとともに、芸人の日常と変化、寄席の温かさを描く貴重な記録本
杉江 松恋
2026/06/20
「コソメキネマ」 第十四回
火曜日の提灯
~浪曲を軸に、移民社会の混沌と愛憎を描く映画『カポネ大いに泣く』をご紹介
港家 小そめ
2026/06/22
シリーズ「思い出の味」 第13回
二つの乳に育てられし
~木綿豆腐に、絹ごし豆腐、豆乳、絹揚げ、おからの炊いたん!
月亭 天使
2025/10/15
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第14回
ウケるごとに極まっていくその美貌
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/06/03
「二藍の文箱」 第13回
地図にない街、地図にない店
~京都、新宿、上野、浅草、池袋。師匠と行った名店の記憶
三遊亭 司
2026/06/02
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第14回
〈書評〉 新宿末広亭 令和の定点観測 (長井好弘 著)
~笑いとともに、芸人の日常と変化、寄席の温かさを描く貴重な記録本
杉江 松恋
2026/06/20
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
月刊「浪曲つれづれ」 第14回
2026年6月のつれづれ(東家千春の躍動、三門綾の奮闘、天中軒すみれの研鑽/浪曲陰陽師・第二弾)
~新しい時代の息吹がここにある
杉江 松恋
2026/06/09
「くだらな観音菩薩」 第14回
烏瑟沙摩明王(うすさまみょうおう)
~叱るより先に、話を聞いてあげたい
林家 きく麿
2026/06/16
「艶やかな不安の光沢」 第3回
とめどない嘘のつくろい
~人はなぜ物語を作るのか。その答えが、夏の暖簾の向こうにある
林家 彦三
2026/06/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第7回
世間せまないか?
~落語家を多数輩出する片田舎、神戸の垂水
桂 三四郎
2026/02/01
シリーズ「思い出の味」 第19回
雪のココア
~内弟子時代に憧れた甘い味
柳家 わさび
2026/01/13
編集部のオススメ
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第13回
突撃リポート! 芸協らくごまつり&謝楽祭
~絶対に間違いない楽しみが、そこにはある!!
服部 拓也
2026/06/29
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第13回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.3
~橋本さん亡き後に立ちはだかった超大型の壁
シン・道楽亭
2026/05/10
「座布団の片隅から」 第13回
声優
~話題の人気アニメ『あかね噺』で声優デビューさせていただきました!
三遊亭 好二郎
2026/05/07
「ずいひつかつどお」 第10回
なぽりたんといっしょ
~つまり、ナポリタンはボヘミアン・ラプソディなのである
立川 談寛
2026/05/04
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
「二藍の文箱」 第12回
午後の逡巡
~その街に息づいた食堂で、ひとり手酌もまた愉し
三遊亭 司
2026/05/02