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〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)

「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回

「もっと語りたい」が見えるページ

 基本的に見開きで右ページが宮の文章、左が橘の写真という構成である。だが、例外がある。1ページで収まりきらないで、次の見開きまでこぼれている芸人が複数いるのだ。

 定型のフォーマットで作られた本で、こういう例外を見つけると私は興味を惹かれる。書き手は、その項にだけたくさん言いたいことがあるわけである。その芸人については、他よりちょっと多く語りたいのである。では、どの芸人が2見開きなのか。

 まずは落語協会から春風亭一花だ。これは当然だろう。2026(令和8)年秋に春風亭一之輔以来14年ぶりに抜擢で真打昇進を果たす。女性落語家としては初である。特筆すべき存在であることは間違いない。

 落語協会では他に、三遊亭ごはんつぶ、そして鈴々舎美馬。美馬に2見開き使われているのを見たときは、あ、やっぱりと思った。私より上の世代の落語好きが、突如美馬の会に行き出したときのことを覚えている。みな、「こうしてはいられない」と言って通い詰めていた。あの動員力は将来の大看板の資格十分である。

 落語芸術協会では笑福亭茶光と桂銀治、上方落語協会から桂九ノ一と続く。

 講談では、講談協会から田辺いちか。これも一花と並んで納得の人選だろう。講談ファンで、今聴くべき講談師はベテランから若手まで含めて田辺いちか、と言う人を複数知っている。日本講談協会の神田松麻呂を私なら2見開きで紹介したいところだが、そうはなっていなかった。それぞれの好みだから、それはいい。

 浪曲では、真山隼人と天中軒すみれ。私事ながら、隼人は「巷説百物語」(京極夏彦原作)他複数、すみれは「陰陽師」(夢枕獏原作)という文芸浪曲を手がけており、どちらもお手伝いをしている。そのことが評価の後押しに繋がったのだとしたら、嬉しいことである。すみれの項では、その「陰陽師」の舞台写真が1枚使われている。

 以上、2見開きの芸人は計9名。本書を、これからの成長株を見つけるためのガイドブックとして活用される読者も多いだろうから、まずはその9名から聴き始めてもいい。