2026年9月の最前線 【後編】 (講談『太閤記』小考⑥ / 9月・10月のおススメ講談会)
「講談最前線」 第27回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/09/18
大坂で徳川家康を槍で討ったとされる、後藤又兵衛(『大坂軍記之内』より)
講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。
講談『太閤記』小考⑥(番外編:これぞ偉大なるフィクション! 徳川家康の墓を詣でた件)
前回、『太閤記』とフィクションのあり方について記したばかりだが、さっそく大河ドラマ『豊臣兄弟!』の演出と展開が物議を醸している。
第32話「賤ヶ岳の決闘」で、織田信長の忠臣とされ、賤ヶ岳の戦いでは秀吉方として参戦し、砦を守るも最後に討ち死にしたとされる中川清秀。ドラマでは彼が途中で裏切り、柴田側から寝返った前田利家に首を刎ねられたのは史実と異なると、清秀とゆかりのある自治体である大阪府茨木市と大分県竹田市から申し入れがあったというのだ。
さらにそれで終わりではなく、次の回の「北庄城の別れ」では、秀吉との攻防に敗れた柴田勝家とその妻お市の最期の場面が、二人して手をつなぎ、天守閣から身を投げるといった美化されかのような描写となり、勝家はお市の命を取ってから自刃したとされる史実とは異なり、武士に許された命の断ち方は切腹であるはずだという意見が。ほかにも城の構造に詳しい人からは、あそこから身を投じることはできないといった意見も見られた。
創作ドラマの一つとして見れば、例えば勝家とお市の場面に関しては、壮絶なストーリーの中での温かな終わり方といった演出としたかったのではないかという見方もできようが、歴史物語という観点からすると史実とかけ離れすぎると、やはり納得がいかないという意見が出るのも当然と言える。
だが、話の嘘は多分にあるもので、果たしてこれらをどう考えるか。フィクションを含んだ物語と、史実との相違を見比べる必要性と考証の意味。ある種、答えの出ることのない問題であるだけに、観る方、楽しむ方の楽しみ方のバランスもまた難しい。
それが『太閤記』であれば、再三示すように「矢矧橋」の段で、秀吉は誰と出会ったのかという問題提起にはじまり、当時はまだ橋自体が架けられておらず、話の嘘として、そこに橋があるからこそ、後々の出世譚が光っていくということもある。
8月に「南陵忌」に足を運んだことは、前編に記した通りだが、実は大阪へ旅した目的はもう一つあった。堺にある徳川家康の墓を詣でたかったのだ。「え?」という声が聞こえてきそうだが、それも無理はない。家康が久能山東照宮で眠っていることは周知の事実だからだ。
上方を中心に読まれてきた『難波戦記』によると、豊臣勢の難から逃れた家康は、輿(こし。駕籠という設定もある)に隠れて堺方面へと逃げるが、その途中で豊臣方の武将である後藤又兵衛と出会い、その槍に突かれ、堺の南宗寺で息絶えてしまう。
このあたりは秀吉贔屓の大坂人向けのストーリーとして、事実とは大いに異なるが、聴き手は嘘を承知で楽しんできた証拠の一つと言えよう。
手前勝手で落としどころのない持論ではあるが、話芸としての講談であれば、落語と同じように脚色があること。例えば、先に挙げた『難波戦記』がらみで言えば、『真田三代記』における猿飛佐助のように、歴史物語を舞台に活躍する、作り上げられた主人公が話を支え、それがエンターテインメントの一つとして楽しまれる要素になる。

しかし、歴史ドラマ、それも大河ドラマになると、やはり考証性が求められるのか、曲解であったり、実際にはいない狂言回しの登場などは許されない(ようだ)。
物語も終盤戦に入るが、まだまだ波乱が起こりそうな『豊臣兄弟!』。ますます目が離せない。
いま読まれています!
「くだらな観音菩薩」 第18回
羅怙羅尊者
~浪曲女子との共演から生まれた新たな夢と、仏様が教えてくれる心の優しさ。笑いの向こうに、芸人の胸の内が見えるコラム
林家 きく麿
2026/10/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第48回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/15
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第49回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/16
「お恐れながら申し上げます」 第14回
噺家の衣替えの話
~いちばん大変なのは、半衿の縫い付け?
入船亭 扇太
2026/10/11
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第18回
友達ほしい
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/10/03
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
月刊「シン・道楽亭コラム」 第17回
演芸ファンがほしかったスマホアプリを作りました ――「ご贔屓手帖」ができるまで
~ファンの小さな困りごとから生まれたアプリの物語
シン・道楽亭
2026/09/09
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第4回
あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/06/27
シリーズ「思い出の味」 第23回
カレーのような草枕
~自由でゆるくて、どこか芯がある。かつて新宿にあった名店の最後を描く、愛おしい物語
田辺 一記
2026/04/21
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「くだらな観音菩薩」 第18回
羅怙羅尊者
~浪曲女子との共演から生まれた新たな夢と、仏様が教えてくれる心の優しさ。笑いの向こうに、芸人の胸の内が見えるコラム
林家 きく麿
2026/10/16
「お恐れながら申し上げます」 第14回
噺家の衣替えの話
~いちばん大変なのは、半衿の縫い付け?
入船亭 扇太
2026/10/11
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第48回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/15
「噺家渡世の余生な噺」 第18回
人に負けないもの
~情熱は、巡ってくる
柳家 小志ん
2026/10/14
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第16回
〈書評〉 殺し屋の営業術 (野宮有 著)
~凄腕営業マンが命がけで売上2億円を目指す、異色の犯罪ミステリー小説!
笑福亭 茶光
2026/10/12
「ずいひつかつどお」 第13回
なつさんさようなら
~夏が終わって良かった。夏なんていいところが一つもないのだから
立川 談寛
2026/10/09
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第49回
好奇心が切り開く、新しい講談の世界 一龍斎貞奈(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/10/16
「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第14回
恩返し
~師匠から頂いた「佑輔」という名前は、今も進む道を照らしてくれる
古今亭 佑輔
2026/10/05
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第14回
恩返し
~師匠から頂いた「佑輔」という名前は、今も進む道を照らしてくれる
古今亭 佑輔
2026/10/05
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第13回
「継続は力なり」ではない
~僕を待っていた、悲しい結末。“計画倒れ人生”を笑い飛ばす愉快な実話エッセイ!?
桂 三四郎
2026/09/29
「コソメキネマ」 第十七回
玉川祐子師匠
~103歳の玉川祐子師匠、ついに『徹子の部屋』へ!! 映画は『ヤング@ハート』をご紹介。
港家 小そめ
2026/09/19
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第18回
友達ほしい
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/10/03
「マクラになるかも知れない話」 第十四回
君たちはどう痩せるか
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/09/25
「テーマをもらえば考えます」 第14回
師匠のコーヒーは
~笑いも苦みもたっぷり、師弟をつなぐコーヒーの思い出を綴ったエッセイ
三遊亭 天どん
2026/09/30
「くだらな観音菩薩」 第18回
羅怙羅尊者
~浪曲女子との共演から生まれた新たな夢と、仏様が教えてくれる心の優しさ。笑いの向こうに、芸人の胸の内が見えるコラム
林家 きく麿
2026/10/16
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第17回
〈書評〉 役者の落語はお父さんのカレー (小宮孝泰 著)
~「演じる」と「語る」の間に、落語の魅力がある。演劇と落語を比べて見つけた、笑いの秘密
杉江 松恋
2026/09/22
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回
ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物
~もっともっと、あなたの落語を聴きたかった
シン・道楽亭
2026/10/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第13回
「継続は力なり」ではない
~僕を待っていた、悲しい結末。“計画倒れ人生”を笑い飛ばす愉快な実話エッセイ!?
桂 三四郎
2026/09/29
「令和らくご改造計画」
第十四話 「踊る金持ちピエロ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/09/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第17回
演芸ファンがほしかったスマホアプリを作りました ――「ご贔屓手帖」ができるまで
~ファンの小さな困りごとから生まれたアプリの物語
シン・道楽亭
2026/09/09
「座布団の片隅から」 第17回
好楽
~祝・傘寿! タフすぎる三遊亭好楽師匠の宴
三遊亭 好二郎
2026/09/07
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第十七回
四段目、 そば清、 愛宕山
~初心者でも楽しめる、オチがもっと面白くなる落語入門
林家 はな平
2026/09/06
「艶やかな不安の光沢」 第4回
N氏の碑から浪江の海まで
~長崎の碧い海から、忘れられない故郷の海へ。喪失と希望のロードムービーのようなエッセイ
林家 彦三
2026/09/04
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第17回
ありがとう失言、待っているよ暴言
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/09/03
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25