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あの日、宝塚で人生の幕が上がった

「かけはしのしゅんのはなし」 第16回

 開演のブザーが鳴り、「とにかく楽しんで!」という言葉とともに幕が上がります。

 この日は、ミュージカル『君を愛してる ~Je t’aime~』と、ショー・ファンタジー『ミロワール ~鏡のエンドレス・ドリームズ~』の2本立て。

 前半の『君を愛してる』は、20世紀のパリを舞台に、遺産相続のために「半年以内に上流階級の女性と結婚する」という条件を課された大富豪の青年が、立ち退きの危機に瀕したサーカスの花形スターと出会うラブ・ロマンス。

 ……正直に言うと、面白さがわかりませんでした。

 自分の感受性が追いついていないだけなのか、それとも常連向けのツボがあるのか。幕が下りた休憩時間、隣のおじさんが「今回、いまいちだったよね、ゴメンね」と自分のことのように謝ってくれました。常連の方も思っていたんだ。

 しかし、休憩後の『ミロワール』で世界が一変します。

 これがめちゃくちゃ面白い! 絢爛豪華!! 宝塚歌劇の魅力を全身にシャワーのように浴びている感覚。客席のボルテージが一気に上がり、劇場全体が大きなうねりのような熱気と拍手に包まれました。隣のおじさんも「いやぁ、面白かったねぇ!」と大満足。

 この『ミロワール』の感動と興奮が忘れられず、学生時代は宝塚歌劇へ通い詰めるようになりました。心が激しく動くあの感覚!

 そこからミュージカルに興味が広がり、多くの作品に触れ、劇団四季の『アスペクツ・オブ・ラブ』という、ツッコミどころ満載のストーリーを圧倒的な楽曲の素晴らしさでねじ伏せる作品を観劇できたのが良い思い出です。

 もし、あの日の初見が「自分に刺さらない前半の作品だけ」で終わっていたら、今の自分はありません。これは落語家となった今、強く肝に銘じていることです。

 初めて落語を聴きに来てくださった方に「面白い」と思っていただけなければ、二度と落語会に足を運んでもらえないかもしれない。

 「ミロワール」とは、フランス語で「鏡」という意味だそうです。あのとき、勇気を出して並んだ東京宝塚劇場の客席は、私のその後の人生を映し出す、始まりの「合わせ鏡」だったのです。

 良いこと言えた!――

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