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ありがとうございました、龍玉師匠 ~112席の宝物

月刊「シン・道楽亭コラム」 第18回

え、本当に箸を割らないの?

 まずは噺から少し外れたところから始めます。

 龍玉師匠は、お酒を飲むときに「箸を割らない」「つまみを食べない」という話が巷間に伝わっていました。私はシン・道楽亭で、二度ほど龍玉師匠にお会いすることができました。腰が低く、ニコニコと優しい物腰。打ち上げのとき、確かに箸を割りませんでした。

 一門の皆様も、あちこちでその事実を証言されています。「飲まないときはよく食べるんです。飲み出すと、飲めなくなるから食べないんです」とは、桃月庵白酒師匠のお言葉(2026年8月31日、雲助一門会)。

 お酒が命の水だったんですね。

聴くたびに新しい、龍玉師匠の十八番

 同じ噺を何度も聴きました。同じ噺に当たると、一瞬「またか」とは思いますが、それでもなぜ、まったく飽きなかったのか。それは、その都度、高座に変化が見て取れ、新鮮な印象を残したからではないでしょうか。

 全112席のうち、聴いた回数が多い演目は次の通りです(回数をすべて足すと約70席。112席の6割以上になります)。

・第5位(3回)
 「大仏餅」「駒長」「お直し」「やんま久次」「牡丹灯籠・栗橋宿」「双蝶々」

・第4位(5回)
 「道灌」「たらちね」「夏泥」

・第3位(6回)
 「ぞろぞろ」「もぐら泥」「真景累ヶ淵(各話)」

・第2位(8回)
 「鼠穴」

・第1位(11回)
 「親子酒」

 たとえば、第1位の「親子酒」は、ほぼ10回に1回の割合で出会っています。定番の酔っ払い小咄が始まると、内心「またか」なのですが、実は退屈したことがありません。

 本題に入ると、まるで初めて聴くような心持ちになっていきます。寄席では短く、独演会では長くという工夫の妙にうなったり、細かな文言が少しずつ変わっていって新たな発見があったりと、いつしか引き込まれていくのでした。