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噺家の衣替えの話

「お恐れながら申し上げます」 第14回

洗いに出すだけなのに、なぜか財布が危ない

 着物や羽織を仕分ける中で、たくさん着たものは、呉服屋さんに持っていって洗ってもらいます。家で洗える着物は、洗濯ネットに入れて晴れるのを待ちます。着なかったものは、畳紙(たとうし)に入れて保管します。

 洗いに出す着物は、風呂敷に包んで呉服屋に持っていくのですが、タイミングが難しいです。私がお世話になっている呉服屋さんは馬喰横山(ばくろよこやま)にあります。繊維街とでも言うのでしょうか、衣装や裁縫のお店がたくさん並んでおります。

 年に2~3回ほど、馬喰横山駅で降ります。着物を預けるためですが、仕事のついでに寄ることが難しいです。着物が重たいのと、荷物が増えてしまうことが面倒になってしまいます。かといって、着物を預けるためだけに出掛けるのも面倒だなと思ってしまいます。根が無精なもので、直さなくちゃいけないなと反省しております。

 また、実はもう1つ足が遠のく理由があり、それは第1回にも書きましたが、呉服屋さんの店主が商売熱心なことです。

 行くと洗いの料金を「二ツ目だからね」と少しおまけしてくれます。世間話をしていると「こんな反物(たんもの)が手に入ったんだけど」とおもむろに反物を目の前に広げ始めます。

 良いものばかりですが、高座に向かない、派手すぎる、地味すぎるなど、色々と思っていると、「これね、訳ありで安いのよ」と言われた途端、素敵な反物に見えてきます。それならばとよく見てみると、ますます良いものに見えてくるから不思議です。

 値札が目に入ります。とても買えない値段が書いてあります。途端に魅力的に見えていた反物が布切れに見えます。

 店主は私が怪訝そうな顔をしていることに気が付くんでしょう。「それね、もう少し安くなりますよ」と、また甘い囁きです。ところが限度はあるもので、自分のお財布と相談して、どうしても買えない値段になりますと、泣く泣くお断りをします。

 この時の私の心情をお察しいただきたい。良くしていただいた上に、さらに安くしてくれようという優しさを断るわけですから、胸が張り裂けんばかりです。

 4年もこのやり取りをしているんだから、いい加減に諦めてくれないかなとは微塵も思いません。