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映像思考で編む、新世代講談 田辺一記(中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第32回

映像思考で編む、新世代講談 田辺一記(中編)

雲ノ平山荘の廊下にて(撮影・菅野晴弥、提供・田辺一記)

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

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山との出会いが生んだ『黒部の山賊』

一記 課題制作で監督をやったりもしたんですが、人に指示を出したりするのが性に合っていなくて……。映像の編集作業は好きだったんですが、現場を動かす才能がないなと思い、一人で作る映像に走っていきました。

一記 どこかにフィルムかDVDで残っています……。でも、見たくないです(笑)。

一記 うーん、どうですかね。ちょっとやってみたいという気持ちは、今はありません。

一記 私は、話に臨む時に映像を思い浮かべるんです。それを言葉で描写するという点に、少し活かされていると思います。先ほどもお話ししたように、映画の中でもドキュメンタリー映画が好きで、色々な題材を扱えるところが講談にも共通していると思いますが、いざ作ってみると難しい……。師匠のように面白くまとめられないでいますが、今はちょっとずつ取り組んでいるところです。

一記 10年くらい前のことですが、雲ノ平山荘(くものだいらさんそう)の小屋主と共通の友人がいて、一緒に山に登ったのがきっかけで小屋主と交流がはじまって、また行きたいなと思っていたところ、「アーティスト・イン・レジデンス」という企画が小屋で始まりました。その成果の展覧会を見ると、美術系だけでなく、音楽やダンサーの人もいて、ジャンルも幅広くなっていたので、二ツ目になった時に参加してみようと思って、そこで浮かんだのが『黒部の山賊』です。

一記 そうです。本自体は最初に登った時に読んでいて、ずっと心に残っていました。それを雲ノ平に滞在しながら台本に起こしていきました。作者の伊藤正一(いとうしょういち)さんは既にお亡くなりになっているので、お会いすることはできなかったんですが、息子さんに色々とお話を聞くことができました。そう言えば、滞在中に同じ部屋になった人で、大師匠の(田辺)一鶴を知っている人がいて、ご縁だなと思いました。

一記 山賊と出会うという場面と、山の不思議な話の二場です。