映像思考で編む、新世代講談 田辺一記(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第32回
- 講談
母親から受け継がれた好奇心という資質
―― 今年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』にも若干関係してくる、織田・徳川連合軍に対抗した武田家の家臣である小山田氏の城ですね。
一記 そう考えると、山って色々と人と関わりを深く持っていて、この道は誰が歩いていたんだろうとか、そんなことを考えているとグッと感慨深く思えてきます。そうして調べていけばエピソードは沢山あるでしょうから、掘り起こしていきたいです。
鳥の話、映画の話、山小屋と山にまつわる話……。一記と話していると、全てが一記アイを通してのものとなり、魅力がさらに増してくる。講談の起こりの一つには「ニュース講談」や自身の体験談を読んだ作品もあるので、ここで話していたエピソードを一席物として聴いてみたい。読み続けていけば、一記のオンリーワン演目になるはずだ。続いて、最近の一記について尋ねてみた。
―― 話は急展開しますが、最近、髪型を変えました。以前のマッシュルームカット的と言えばよいのか、あの髪型こそ田辺一記のトレードマークであると思っていたのですが(笑)。
一記 これは……。宝井琴梅先生が開いていらっしゃる「梅桜亭」へ、よくいらっしゃる美容師さんからアドバイスをいただいて、伸ばしてみようかなあと思ったんです。それがいざ伸ばしてみると、髪を束ねた時に涼しいんです(笑)。意外と短い時よりも楽かもしれないと。
―― 周囲から驚かれたりしませんか。
一記 色々と反応がありました(笑)。久々にお会いした先生に気づいてもらえなかったり、「普通になっちゃったね」って、髪型の印象はやはり大きいですね。またいつか短くするかもしれませんが、しばらくはこの髪型で参ります。

―― 自分の性格をどうとらえていますか。
一記 母親が演劇少女だったらしくて、と言っても、出方というより裏方だったようです。そんな母親の蔵書を見てみると、永六輔(えいろくすけ)さんの『芸人、その世界』とか、そういった類の本が並んでいて、生前は芸能の話はしたことがないんですが、何か惹かれるものがあったのかなと思います。そう言えば小沢昭一さんの「唐来参和(とうらいさんな)」のパンフなんかも出て来て、“見に行っていたんだ。だったら話を聞いてみたかったな”と思います。そうした割と色々と興味を持つといった性格は受け継いでいると思っています。
ここに出てくる「梅桜亭」は、宝井琴梅・琴桜両先生が新潟県南魚沼市の一村尾(ひとむらお)で、月に2日(月末の土日開催が多い)開いている寄席で、お二人のほかに、一門や二ツ目の講釈師が主に出演している。また唐来参和は江戸時代に実在した狂歌師であり、戯作者であった人物で、井上ひさしが小説『戯作者銘々伝』の中で描いた人物を、俳優の小沢昭一が一人芝居で演じた作品である。
次回の〈後編〉では、フォークソングを歌う一面や、高田渡の曲『値上げ』に見出す笑いの感覚など、語りの背景にある感性に迫る。さらに名前の由来にもつながる“記録”への関心や、映画『阿賀に生きる』を講談にする構想など、これから目指す未来像についてインタビューする。

(以上、敬称略)
▼田辺一記(講談協会 公式ホームページ)
▼田辺一記 X
●近々の予定

一記試聴室
~田辺一記講談会 sample2~
- 日程:
- 2026年4月30日(木)
- 開場 18:30 開演 19:00
- 会場:
- 神保町視聴室
- (千代田区西神田3-8-5 ビル西神田1階)
- →Googleマップ
- 出演:
- 田辺一記
ゲスト/上野茂都(唄) - 料金:
- 予約/当日 2,000円+1ドリンク(500円)
- ご予約・お問い合わせ:
- メール
- → Kazuki.tnb@gmail.com
- ※公演名、人数、フルネーム、電話番号をお知らせください。
(後編に続く)
こちらもどうぞ(姉弟子の田辺いちかさんへのインタビュー)