映像思考で編む、新世代講談 田辺一記(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第32回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/03/29
山に刻まれた歴史を歩く
―― 続きはどうされますか。
一記 いわゆる一連物ではないですし、短いエピソードが並んでいるものなので、どうつなげていけば良いか。今はもう一作ぐらいはできるかなと思って、一旦寝かしているところです。他にも黒部とつながる猟師の本もあるので、それもまたできればいいなと。それと関連のある小屋があるので、そちらにも行ければなあと思っています。

ここに登場する雲ノ平山荘の小屋主である伊藤正一(1923年~2016年)は、元はエンジニアであったが、戦後、富山県の飛騨山脈に位置する雲ノ平に山小屋を開設。他にも山小屋や登山道の整備に尽力した。『黒部の山賊』は1964年に発表された山岳本を代表する作品であり、現在、雪ノ平山荘は次男が引き継いでいる。
―― 山登りは好きなんですか。
一記 出身が群馬なので、子どもの頃は遠足の行く先は山が多くて、好きというより、そこに山があるから登るという(笑)。でも大人になってから山に登ろうという気持ちは起こらなくて、友だちに誘われたから登るようになりました。雲ノ平へ行くのは大変なので、練習登山をしてきました。これからはもうちょっと気軽な感じで行ければと思っています。そこまではまだまだ行けていませんが。
―― ほかに今、取り組んでいる話と言えば。
一記 佐々成政(さっさなりまさ)のエピソードを読んでいます。徳川家康に豊臣秀吉を倒してもらおうとお願いに行こうとしたら、敵に囲まれているので、山越えをするんですが、結局、相手にされずに報われなかったという……。努力や思いが報われるから取り上げられるという話が多い中、人生そんなこともあるよねと思って作ってみました。
―― そんな考えを持っていたとは面白い! 手ごたえはありますか。
一記 作っていくうちに感情移入できるようになって、もっともっと練っていければいいなと思っています。
―― 一記さんの言う「山越え」は、『太閤記』にも登場することがある「さらさら越え」ですね。ならば、その佐々成政が登った山にも取材に行かなければならない。
一記 あくまでも伝説で、成政が通ったと言われるルートも諸説あります。全くの作り話であれば、名前であったり地名であったり、そこまではハッキリと残せません。やはり伝説として残っているから、ああした作品が生まれたんだろうと思います。そうした各地に残るエピソードをつなげていければと思っています。
それに立山の五色ヶ原(ごしきがはら)には行ってみたいですね。そこで成政が通ったかもしれない道に立ってみたい。山と言えば、山梨の岩殿山(いわどのさん)にも行ったことがあります。山城があって、武将がいた山です。いざ登ってみたら想像していたよりも険しくて、急峻でザラザラしたところもあって大変でした。こんなところにどうやって馬を連れて来たんだろう。城を造るにしても大変だっただろうな。攻められにくいだろうなと、そんなことを思ったりもしました。
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