ぼくはさんさい
「ずいひつかつどお」 第9回
- 落語
立川 談寛
2026/03/31
3月31日は、アニマル浜口が木村健悟のブランチャ・スイシーダを受けて後頭部を打って失神した日だというのはみんな知っていることと思うが、「山菜の日」でもあるそうだ。
説明するまでもないが、331(さん・さ・い)の語呂合わせだ。「3歳の日」でも良いとは思ったが、3歳に記念日を与えたところで、ビールも飲めないし、熱燗をキュウっと一杯もできない。梅水晶など以ての外だ。まあ、3歳が山菜と揉めた話も聞かないので、快く3歳が山菜に記念日を譲ったのだろう。
この時期の山菜と言えば、やはりフキノトウだろうか。独特な香りとほろ苦さがあり、好きな人にはたまらないが、そうでもない人には何のために食べるのかが理解できない逸品だ。天ぷら以外にも調理法はあるそうだが、天ぷらしか食べたことないかもしれない。というかそんなに食べた記憶もないかもしれない。
私が子供の頃に食べていた山菜と言えば、やはりコゴミではないかと思う。詳しくないのでワラビやゼンマイとどう違うのかがわからないが、山菜採りが趣味の父親がよく山から持って帰ってきたやつだと思う。持ち帰った戦利品を新聞紙の上で分別し、誇らしげに眺めていたのを覚えている。天ぷらやお浸しにして食べたのかな。野菜が好きな子供ではなかったが、新鮮な山菜は子供が食べても美味しく感じた。同時に自分は山に入ったりのアウトドアなことは一切苦手なので、平然とやってのける父はたいしたもんだと思った。
農業の進歩によって、一年中いろんな野菜が食べられるようになった。落語に「千両みかん」というのがある。冬にしか食べられないみかんを真夏に食べたくなり過ぎて、気の病を患う話だ。今でも演者のやり方で楽しむことはできるが、今後、農業や養殖業が進歩していけば、昔話のような扱いになるかもしれない。
それにしても美味しくて食べやすい野菜が世の中に溢れているのに、なぜ人々は山菜を求めるのだろうか。どう考えてもフキノトウよりもキャベツや玉ねぎの方がクセがなく食べやすい。畑にいくらも野菜があるのだから、山など行かなくても良いのではないか。となると山菜には、人間のDNAに刻まれた太古の記憶を呼び起こす何かがあるのではないだろうか。原始時代、キャベツや玉ねぎがない頃に栄養源として食べていた山菜。その懐かしい原始の味や香りを、令和になっても欲しているのだ。
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