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〈書評〉 愛し、愛され。 (毒蝮三太夫・玉袋筋太郎 著)

「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第12回

街っ子同士の邂逅

 談志とは若いころからの付き合いであり、『笑点』の座布団運びを任されるなど、深い縁があったのが毒蝮三太夫(どくまむしさんだゆう)だった。毒蝮も発足後のBコースに所属し、立川毒まむ志を名乗ったのである。

 本名の石井伊吉(いしいいよし)でデビューした後、談志に無理矢理改名させられ、以降は奇異な名前で芸能界を生きてきた。個性派俳優としての印象も強いが、看板となったのはTBSラジオ「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」で、さまざまな土地に出没して現地の年寄りたちを「ジジイ」「ババア」といじるパーソナリティの味が聴取者に愛されている。頻度こそ落ちたものの、1969(昭和44)年に始まった番組は現在も放送中であり、半世紀以上に渡って息の長い活躍を続けている。

 新刊『愛し、愛され。』(KADOKAWA)は、その毒蝮三太夫を生粋の東京生まれ、街っ子の芸人として、また人気番組『町中華で飲ろうぜ』の街歩きレポーターの大先輩として尊敬する玉袋筋太郎(たまぶくろすじたろう)がインタビューした、珍しい顔合わせの対談本である。

 玉袋筋太郎は近年、『美しく枯れる』(KADOKAWA)などの著書において、長年連れ添った妻に逃げられて、五十代にして一人暮らしを始めたことなどを明かし、その飾らない態度によって再評価を集めている。「江戸っ子は五月の鯉の吹き流し。口先だけではらわたなし」と言うが、飾らずに腹の中をさらけ出すことで自分が何者かを改めて示そうとしているのである。

 本書では、江戸っ子の大先輩である毒蝮から、その著書の中身についてからかわれる場面もあり、なかなかに味わい深い。毒蝮三太夫は1936(昭和11)年生まれ、玉袋筋太郎は1967(昭和42)年生まれ、歳が三回りも違うと貫禄も圧倒的に違う。そのへんはぜひお読みいただきたい。五十代、六十代を過ぎた後の、人生の秋と冬の季節をどう生きるかという、いい指南書にもなっている。