リアルインスタンスレポート ~20代・30代が集まる落語会の正体
「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第10回
- 落語
古今亭 佑輔
2026/06/05
仮想と現実の境界線の先に見えた、落語のあたたかな可能性
リアルインスタンス集合?!
皆様にとって「インスタンス」は、馴染みのない言葉であると思う。これはVRChat(プラットフォーム)における同じワールド(仮想空間)の部屋のようなものである。もしくは、サーバーのコピーである。
インスタンスを開くことで、そこに友人が集い、話したりイベントをしたりすることができる。つまり、“リアルインスタンス集合?!”とは、「現実世界の空間(寄席)に集う」という意味である。
先日、新宿二丁目にある「シン・道楽亭」をお借りして、VRC落語会(オンラインで定期開催している落語会)のオフ会を行った。オフ会といっても、もちろん落語会がメインである。終演後に打ち上げを行い、VRユーザーと交流できた。

お客様にも喜んでいただけたようで、自分もとても楽しい催しとなった。会場は満員御礼、比較的早い段階で予約は埋まった。お客様の満足度、収支すべてにおいて、とりあえずは成功したと言っても良い出来だろう。
今後もこういった活動は並行していくが、なぜオフ会を行うのかを綴ってみたい。
ターゲット層 ~若者との接点をどう作るか
落語会の入り口は、狭くなりつつある。
落語が人々の身近にあり、大衆芸能だった時代はいまや昔のことである。それはやはり世間に娯楽が溢れ、分かりやすいものが求められる時代に、着物を着て噺をする落語は若者にとって親近感を持てる芸能ではなくなっているからである。
我々もお客様から「難しそう」「教養が必要になる」「敷居が高い」とよく言われることがある。でも寄席に行ってみれば案外、そんなことはないと分かってもらえるだろう。料金は安いし、一日中楽しめるし、服装も自由、そして肝心の落語も演者が常にお客様を置いていかない工夫を凝らしている。
だが、人に「寄席に行ってみよう」と思わせ、行動を起こさせるのは容易ではない。

落語会のターゲット層といえば、40代以上がほとんど。親が落語が好きであったり、まだ何となく落語が身近だった世代の方々である。
有難いことに、落語好きのコミュニティは沢山ある。好きな方は、1日に何件もの落語会を梯子する。お客様のおかげで、落語界は成り立っている。
しかし、課題はある。若い方が落語に興味を持って入ってくることが少ない。近頃、アニメや漫画を見て落語に興味を持つという方もいる。それは本当に良いことだと思う。しかし演者である我々は、その入り口を広げる努力をしなければならない。努力を絶えずしなければ、落語界は存続できないからだ。
一番恐ろしいのは、落語家になりたいという若い人間が入ってこなくなることである。芸を継承してゆく人間がいなくては、落語界は衰退してしまう。
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