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〈書評〉 愛し、愛され。 (毒蝮三太夫・玉袋筋太郎 著)

「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第12回

『笑点』で生まれた名前

 前置きが長くなったが、ここで紹介したいのは、本筋というよりは毒蝮が盟友・立川談志について語ったくだりだ。玉袋との談話によれば、出会いは談志がまだ柳家小ゑんを名乗っていた二ツ目時代で、「劇団山王」に所属していた毒蝮が第一生命ホールにおける舞台に出演したところ、同じ場所で小ゑんも出る若手落語会があったのだという。そこから付き合いが始まるが、若いころの談志はとにかく鼻っ柱が強かったので、ぶつかることもたびたびあった。

 前述のように、石井伊吉は『笑点』内の企画で毒蝮三太夫に改名したのだが、当初は妻にそのことを打ち明けられなかったのだという。当時、毒蝮の妻は三越に勤めており、日曜日は出勤なので『笑点』が放送される時間にはテレビの前にいなかった。半年ぐらいそうやって隠し通したとき、家に遊びに来た談志が「おまえの亭主はヘビになったぜ」とばらしてしまったのである。

 毒蝮は妻から「わたしはあなたの女房でしょう。あなたが決めたことを、わたしが嫌だというと思ったの?」と、改名の事実よりもそれを隠したことを叱られ、「あぁ、そうか。夫婦というのは隠し事をせずになんでも素直に話したほうがいいんだな」と学んだという。