浦安の風が吹いている
「浪曲案内 連続読み」 第11回
- 浪曲
東家 一太郎
2026/05/20
浦安で受ければ本物
初代浦太郎は、先述の「関東節ひとすじ」で楽浦師匠の芸についてこう語っています。
「あのうるさい浦安なんかでも(京山恭為は)大変な人気でしたよ。名人級の人の出ていた寄席に出演できたということだけでも私なんか幸せだと思いますネ。楽浦ぢいさんが出ても、五分か十分経たないと客をつかめませんが、(春日)清鶴さんが出ると…一分も経たない内に客の懐へとびこんで…パッと、客をつかんじまう。その呼吸は見事なもんでした。
一方楽浦ぢいさんのは、十分、二十分と経つ内にだんだんと引き込んで行って最後まで息をつかせない。これも名人芸ですネ。そういう両方の芸を知っただけでも勉強になったんですネ」
さらに楽浦師匠はネタ数が多く、「野狐三次」や「夕立勘五郎」などの連続物で、30日の興行を全て演目を変えて、昼夜計60席、浪曲を務めてしまうような人でしたので、寄席の席亭にとても重宝がられました。
そんな楽浦師匠が浦安亭について語っている音源を、「浦安の人々を魅了した大衆芸能」の対談コーナーでお客様に聞いていただきました。木馬亭で楽浦師匠が当時の浪曲ファンのお客様に語りかけています。
「お客様の批判の声が、もっと強くしていただきたいことを望んでいる。結局は、お客様が甘すぎるということになる。ちょっと良い節だってぇとすぐに、手を叩く。そういうことをよほど厳格にですね、あんまり手を叩かない。そうして、ここという時にはもう思いっきり、万雷のごとく拍手をいただいて。
あとはもう簡単な場合は、手の方は差し控えていただいて、そうして芸をみっちりお聞きになって、気に入らなかったら、ひどい顔をなさらないで、『おい、もうよせよ。お前は聞いてはいられないから降りろよ』。
後ろの方に浦安のお客様が、これはお客様というよりも、素人浪曲の、みんなひとかどの芸を持った者、大勢来られていますが(註)、この浦安なんてぇところは、とても、やかましいとこでしてね。もう二階から足がぶら下がってるんですね。聞いてるお客の(足)ね、座ってなんかいませんよ、漁師ですから。足をぶら下げて、下手だってぇと足でこう手を叩く。もう気に入らなきゃ、よせよせですよ。あくびをしたり、こっちで話をしたり…」
浦安市郷土博物館で、浦安亭の模型を見てきてるんで、想像できるんですね。あぁ、あの二階席からお客さんが足をぶらぶらさせていたのか。一階の客はこんな感じで後ろを振り向いて、二階の客と明日の漁の話をしていたのだろう。
楽浦師匠は、この舞台で浪曲を演っていたのか――。

(註)浦安亭には浪曲の同好者が集まり、天狗連がたびたび開催され、観客が人気投票をして順位を決めたりしたそうです。企画展には、浦安亭で開催された「素人浪曲民謡舞踏競演大会」の入場券も展示されていました。浦安には芸達者の人が多く、浪曲天狗道場のような素人参加浪曲番組の「ラジオ放送合格者多数出演」と記されています。
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