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浦安の風が吹いている

「浪曲案内 連続読み」 第11回

厳しさと温かさ

 「浦安の人々を魅了した大衆芸能」公演本番では、初代浦太郎が昭和26年(1951年)1月3日に浦安亭で務めたと記録に残る「野狐三次 木ッ端売り」を東家一太郎、曲師・東家美、務めました。真ん中の客席には、浦安亭の興行を手伝っていらした家族の皆様が座っていらっしゃいます。浪曲を進めるうちにわかってきました。昔の師匠方が、口を揃えて浦安、浦安と云っていた意味が!

 節の良いところでは、他の会場とはひと味違うタイミングで、浪曲を唸っている私がスッキリしてしまうような、きれいな掛け声をお客様が掛けてくださる。啖呵(セリフ)の盛り上がりでも、万雷の拍手をしてくださる。楽浦師匠が音源で語っていたような、お客様の聞き方を感じました。

 模型で見て来た浦安亭の舞台の上で、自分が浪曲を務めている気持ちに、ふっとなりました。目の前で笑顔で聞いてくださるお客様たち。目線を上げると、あるはずのない二階席が見えてきます。浪曲を温かく見守ってくださるお客様からは、昔の浦安の空気がまだ漂って来るように感じました。

 漁師町浦安の厳しさは、「お客様が芸を大事にしてくださる、その温かさゆえの厳しさ」と理解できました。

 大師匠の東家楽浦から時を経て「お客様あっての芸だよ。芸人が甘んじてはいけない。お客様とともに芸はある。どのような形でもお客様を大切に」と教えていただいた気がしました。そして、「あれっ、浦安の海から強い風が吹いて来たな。浦安の風が吹いている」と思ったら、それはエアコンの強風だったのです。

 明治43年から昭和40年まで、浪花節、浪曲全盛の時代をともに生きた浦安亭。その後の浪曲低迷期を乗り越え、平成令和と生き続けている木馬亭。合わせて110年。浪曲史の貴重な証言者です。

日本浪曲協会から贈られた50年目を祝う記念の額