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ニッポンの祭りを呑む

「二藍の文箱」 第17回

 石岡の祭りへはじめて行ったのは、その落語会からだいぶ後のはなしとなる。

 いまから15年ほど前、まだ二ツ目のころ、浅草の飲食店で奇数月に開催されていた落語会に、真打までの3年間ほど毎回出演していた。

 わたしが出演する以前からのご常連が多いその落語会にあって、わたしと現・柳家海舟の麟太郎が出演するようになってからのお客さんに、イマイズミさんとイシイさんとおっしゃる義理のご兄弟がいらしていた。

 おふたりとも──時にそのお仲間も──くいくいと日本酒をよく呑み、わたしもその盃を受けていると、はなしの弾みで、イマイズミさんのご実家が茨城の石岡で、石岡のお祭りは関東三大祭りに数えられる、なんてはなしになった。

 「石岡はわたしも知り合いが何人かいて、いつだったか落語会で伺った折にいただいた、府中誉の渡舟(わたりぶね)、あれは旨い酒ですね」
 「ああ、府中誉はうちからすぐ。嬉しいなぁ、渡舟、旨いよね」

 お国自慢は、聞いてるこちらも嬉しくなる。

 「石岡の祭りはさ、田舎祭りだけど見に来てよ」
 「はい、ぜひに」

 ここで社交辞令にしないのが、わたしの図々しいところ。

 その年の石岡のお祭りでは、イマイズミさんやご両親、イマイズミさんの幼馴染に大変よくしてもらった。昔ながらの山車と石岡囃子と呼ばれるゆったりとした囃子の調子、それに独特の幌獅子、もちろん、府中誉の渡舟、こちらは酒も旨いが焼酎もあって、それもまた飲み口よく、暗くなるまで存分に祭りを味わった。

 図々しいのはそれだけに留まらず、翌年は兄弟分の柳家三語楼と連れだって、またお邪魔した。その時は朝から厚い雲が秋空を覆い隠し、いまにも降りそうな空模様だったが、イマイズミさんのお父さんが、しきりに

 「司さんと三語楼さんがわざわざ来たから、神様が雨を降らせないって」

 そう言ってはくれたものの、途中から土砂降りで、ふたりとも濡れ鼠。そこからはただただ酒を呑むばかり……。そんな年もあった。