第五話 「ヨセジャック事件」
「令和らくご改造計画」
- 落語
三遊亭 ごはんつぶ
2025/12/12
絵:大熊2号
#1
──ついに、恐れていた事態が起きた。
暴走した前座さんが、寄席に立てこもり、お客様を人質に“ヨセジャック”をしたと言うのだ。聞きたくない単語だった。そして人質に取られたのは、昼席のお客様全員。総勢……6名!! 大変なことだ。
物騒な知らせを聞きつけ、慌てて現場の寄席へ向かうと、すでに警察車両が横付けされ、赤色灯がぐるぐると回っている。さらに寄席の木戸は黄色いテープで包囲されており、その光景というのは、なんとも現実味がない。
入口付近で指揮を執っている刑事さんに声をかける。
僕 「すみません、落語家なんですが……これは、本当に前座の仕業なんですか?」
刑事さんは、少し困ったように頷いた。
刑事 「ええ。さっき閉め切られた楽屋の扉に耳を当ててみたんですが、犯人たちはお互いに『テケツ』とか『はばかり』とか言ってましてね……」
テケツ=受付、はばかり=トイレ。たしかに芸人の言葉遣いではあるが、落語通の一般客でも、ギリギリ使えなくはない。
僕 「それだけだと、断定はできませんよね。落語マニアのお客さんかもしれない」
刑事 「ところがですね…火鉢のことを明らかに『しばち』と言ってたんですよ」
ああ……それは前座で間違いない。江戸言葉にこだわり始めて、ここぞとばかりに火鉢を“しばち、しばち”と言い出すのは、だいたい前座期特有のこじらせ方である。一般人がそこへ突っ込んでいくことは、おそらくない。
僕 「……たしかに、それは前座さんですね」
刑事 「間違いないと思います」
僕 「それで…彼らの要求は?」
刑事 「『前座にも、マクラを話す権利をよこせ』と」
なるほど、そう来たか。
第五話 「ヨセジャック事件」――
いま読まれています!
「講談最前線」 第12回
2025年12月の最前線【前編】 (「イベントスペース鈴丸」オープン、講談のオススメ入門書③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2025/12/15
「二藍の文箱」 第7回
つくまとさわぎとクリスマス・キャロル
~初高座は一生に一度だから
三遊亭 司
2025/12/02
「くだらな観音菩薩」 第8回
弥勒菩薩(半跏思惟像)
~地球滅亡の時に現れるスーパースター
林家 きく麿
2025/12/16
「講談最前線」 第10回
2025年10月の最前線【後編】 (聴講記:日本講談協会定席、講談のオススメ入門書②)
~人物伝の魅力全開
瀧口 雅仁
2025/10/08
シリーズ「思い出の味」 第14回
馬琴と琴星と琴鶴と琴人と ~師弟の食事はいつもちぐはぐ
~どじょう鍋からサンドウィッチまで。師弟の食卓は、人生の味がする
宝井 琴鶴
2025/10/17
「噺家渡世の余生な噺」 第8回
旅こそ、己の浅さを知る手段。だから若いうちに出る
~「まだ自分は生きている」と感じるために
柳家 小志ん
2025/12/14
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「令和らくご改造計画」
第五話 「ヨセジャック事件」
~落語家にとってのマクラとは何か?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/12/12
月刊「浪曲つれづれ」 第8回
2025年12月のつれづれ(天光軒新月・五月一秀二人会、京山幸太・東京独演会)
~心斎橋角座、奇跡の一夜
杉江 松恋
2025/12/09
「くだらな観音菩薩」 第7回
目青不動
~人の縁に感謝。ありがとうございます
林家 きく麿
2025/11/16
「講談最前線」 第12回
2025年12月の最前線【前編】 (「イベントスペース鈴丸」オープン、講談のオススメ入門書③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2025/12/15
「二藍の文箱」 第7回
つくまとさわぎとクリスマス・キャロル
~初高座は一生に一度だから
三遊亭 司
2025/12/02
「くだらな観音菩薩」 第7回
目青不動
~人の縁に感謝。ありがとうございます
林家 きく麿
2025/11/16
「くだらな観音菩薩」 第8回
弥勒菩薩(半跏思惟像)
~地球滅亡の時に現れるスーパースター
林家 きく麿
2025/12/16
「令和らくご改造計画」
第五話 「ヨセジャック事件」
~落語家にとってのマクラとは何か?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/12/12
「噺家渡世の余生な噺」 第8回
旅こそ、己の浅さを知る手段。だから若いうちに出る
~「まだ自分は生きている」と感じるために
柳家 小志ん
2025/12/14
「講談最前線」 第11回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「くだらな観音菩薩」 第2回
阿修羅
~私は良い人なので、お気軽に話しかけてくださいね!
林家 きく麿
2025/06/16
「講談最前線」 第10回
2025年10月の最前線【後編】 (聴講記:日本講談協会定席、講談のオススメ入門書②)
~人物伝の魅力全開
瀧口 雅仁
2025/10/08
「講談最前線」 第12回
2025年12月の最前線【前編】 (「イベントスペース鈴丸」オープン、講談のオススメ入門書③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2025/12/15
「令和らくご改造計画」
第五話 「ヨセジャック事件」
~落語家にとってのマクラとは何か?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/12/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第8回
やめたら負けが確定する! 博打好きのたわごと
~席亭のお一人は、元競馬記者!
シン・道楽亭
2025/12/10
シリーズ「思い出の味」 第11回
食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶
~焼肉は落語
桂 笑金
2025/08/17
「お恐れながら申し上げます」 第4回
大山詣りに行ってきました
~おじさん3人と私の珍道中
入船亭 扇太
2025/12/11
シリーズ「思い出の味」 第17回
うなぎとらくごの味
~落語家と鰻職人は、どこか似ている
三遊亭 玄馬
2025/12/13
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様、香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「噺家渡世の余生な噺」 第8回
旅こそ、己の浅さを知る手段。だから若いうちに出る
~「まだ自分は生きている」と感じるために
柳家 小志ん
2025/12/14
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
シリーズ「思い出の味」 第16回
師匠と香港楼と命名秘話
~緊張と感謝の中で頬張った麻婆豆腐
神田 紅純
2025/12/04
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第8回
にらみ返し、大工調べ、短命
~私の落語家人生を延命してくれた、喜多八師匠
林家 はな平
2025/12/06
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第8回
今日は宇宙一の美が誕生した日
~読むと元気になる千春ワールド!
東家 千春
2025/12/03
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様、香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「講談最前線」 第11回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
「講談最前線」 第12回
2025年12月の最前線【前編】 (「イベントスペース鈴丸」オープン、講談のオススメ入門書③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2025/12/15
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「くだらな観音菩薩」 第7回
目青不動
~人の縁に感謝。ありがとうございます
林家 きく麿
2025/11/16
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第7回
ビールの秋、日本酒の秋、わたしの美が深まる秋
~浪曲師の日記が、ここまで笑えていいんですか!
東家 千春
2025/11/03