ころもあればらくあり
「ずいひつかつどお」 第5回
- 落語
立川 談寛
2025/10/27
恐れずに変ればいい
野球選手がバッティングや投球のフォームを変えるのも、衣替えではないだろうか。投手はより速い球を投げるために、打者はより打てるようにフォームを変える。変えることでいい結果が出るとは限らないが、より高みを目指すために衣替えする。
漫画家の井上雄彦先生は「バガボンド」を描く際に、Gペンから筆にすることで流れるような線を使い、独自の画風を作り出した。現状に満足せず、より良いものを求めてスタイルを変えていく、これもある種の衣替えだろう。
アスリートや漫画家の先生には遠く及ばないが、私も割とそういう衣替えをしてきたつもりだ。前座の頃はもちろんだが、10年前と5年前と今とでは全然違う口調になった。なったというか意図的に変えてきた。作り込んだものではなく、どうすればもっと自分らしいのだろうかと考えながら変えたので、今のカタチになっている。
ただ何となく、もう少し変わりそうな予感はしている。いまだ衣替え途中なので、お客様にはそのうち完成形を見せられるようにしたいが、完成する前に寿命を迎えるかもしれない。
誰しも変身願望のようなものがある。男の子はウルトラマンや仮面ライダーに憧れ、女の子はプリキュアやポワトリンに憧れる。全ては創作の天才たちが願望から生み出したもので、現実にはそんな不思議な力は存在しない。
テクマクマヤコンテクマクマヤコン、大坂なおみにな~れ~とコンパクトに叫んだところで何も起こらないし、もし山の頂上だったとしたなら、大坂なおみにな~れ~大坂なおみにな~れ~大坂なおみにな~れ~と虚しくこだまするだけだろう。世知辛いものだが、ここは令和の日本。創作物は頭の中で楽しんで、現実は現実を楽しむしかない。
漫画や映画の食べ物は、いくら美味しそうでも食べられない。だが我々はいつでもチョコレートパフェを食べられるのだ。その幸せを噛み締めていくのが、人生ではないだろうか。
人は誰しもが衣替えしている。これを読んでいる奇特なあなたも当然、衣替えをしている。衣替えをすることで自分の暮らしを快適にし、精神を安定させているのだ。
近頃、急に寒くなってきた。どうかお風邪を召されぬよう、暖かくしてくださいね。
(以上、敬称略)

▼立川談寛 公式ホームページ
▼立川談寛 X
(毎月28日頃、掲載予定)
前回はこちら
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