東京
「座布団の片隅から」 第10回
- 落語
三遊亭 好二郎
2026/02/07
ライブのセットリストも聴きたい曲が一通り聴けて大満足だったのだが、1曲だけ知らない曲があった。『広い浅瀬』という曲だ。
そうか、盲点だった……。この曲は配信リリースがされておらず、CDを買わないと聴くことができない。このレア曲がライブでかかったおかげで初めて聴けたのだが、歌詞に衝撃を受けた。近頃の言葉で言うところのパンチラインである。それがこのワンフレーズだ。
言えないことが私を作る――。
くらった。いわゆる“心に刺さった”というやつだ。落語を聞いていると、たまにあるあの現象だ。
それは時に気持ちが軽くなる言葉であったり、悩みを解決してくれるセリフだったり、一時的に心の絆創膏になる一言だったり……。あべこべに、自分が目を背けてきたものにハッと気づかされることもある。それが“心に刺さる”瞬間である。
自分が探している言葉がフッと目の前に浮かんでくるあの感覚。満たされたいものを満たしてくれるものが現れた幸福感。
“言えないことが私を作る。”
思わず『そうなんだよ!』と心の中で唸ってしまった。噺家は、マクラや落語の中では好き勝手喋っているように見えて、言えないことの方が多いのだ! その言えないことが蓄積されて自分はできているのだと再認識できたというか、改めて気づかされたというか。その言えないことを上手く落語に昇華させて表現しているんだなぁ、と自分で言語化ができた。

ある師匠に言われたことがある。「落語家って、自分の好きなところを表現したくなるけど、それだけじゃダメだよ。実は自分の醜いところ、汚いところが一番の価値になる。自分が人に見せたくないところが商売になるんだよ」と。
素敵な言葉だ。自分のダメな部分がその人の一番のオリジナリティになるという。その格言と、「言えないことが私を作る」という橋本絵莉子さんの歌詞がリンクした。言葉の解像度が深くなった感じだ。そう、言えないことが僕を、僕の落語を作っているのだ。
言えないことはたくさんある。嫉妬、欲、羨望、怒り、ほかの芸人への悪口、楽屋で起きるスキャンダル etc……。僕は言えないことでできている。
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