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カレーのような草枕

シリーズ「思い出の味」 第23回

何度か食べに行って、毎回渡されるラッシー券の裏にバイト募集中とあったので、応募してみた。

働くことになり、仕事の流れなどがまとめられた紙を渡されたのだが、その冒頭の方にまず、「友人・知人が来たらラッシー出してよし」(現物が手元に見当たらないので記憶)と書いてあった。まず、それなのか?と思った。その後の仕事の内容についての記述はとても合理的で、後々に知るところとなる店主の“うまさん”の、ゆるいところとすごくちゃんとしているところが同居した感じの象徴みたいだったなと今となっては思う。

当時の私は、夜は居酒屋で働いていて、昼に時々(稀に夜も)草枕に入るという生活になった。

草枕は、カレーを作るコンロの人は固定の数人だが、ホールのバイトは沢山いて、それぞれに本業を持っている人がほとんどだった。
会社員、主婦、大学生、高校生、俳優、音楽家、翻訳家、デザイナー、漫画家のアシスタント、イラストレーター、芸人、ダンサー、舞台演出家、映像ディレクター、写真家、美術家、保育士、飲食店で働くことを愛する人、とにかくカレーが好きな人 etc…
出勤頻度もそれぞれで、毎週コンスタントに入る人もいれば、月一くらいだったり、数ヵ月ぶりに来ましたとか、数年ぶりなんて人もいたりするような具合で、「辞める」という概念があまりなく、総勢何人いたのか、よく分からない。

私が働き始めた頃の草枕は、人気店ではありながらもまだ多少ヒマな日もあって、そういう時には一緒に入った人たちと、ヒマ仕事(ミニトマトのヘタ取り、ラッシー券を折るなど)をしながら、色々な話をした。

草枕には伝統のノートがあり、業務連絡からそれぞれの近況報告や告知や、おすすめのカレー屋、ただのつぶやき、ヒマ仕事すらなくなった人たちが描いた絵しりとり等が書き込まれていた。