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カレーのような草枕

シリーズ「思い出の味」 第23回

店が雑誌などで取り上げられる機会も増え、徐々に忙しい日が増えていった。何のテレビ番組だったか、見てはいないが、放送から1年近く経っているのに「石原さとみさんが食べたのどれですか?」と聞かれて、恐ろしい……と思った(放送直後はすさまじかったらしい)。

時々、夜の営業を休みにして、店内で飲み会が開かれることがあった。夕方からゆるゆると人が集まり始め、カレーを作りたい人たちがそれぞれに作ったカレーを食べ比べたりしながら、飲む。毎回、うまさんは呼びかけに手土産不要と書いていたが、毎回様々な手土産があちこちで店を開いていた。お互い長年働いているのに、この飲み会で初めて会うという人も多かった。

うまさんの結婚パーティーが新宿アルタで開かれ、バイトの皆で手伝ったのも貴重な思い出だ。そのアルタもなくなってしまうとは、諸行無常……。

コロナ禍で草枕も様々な変化を強いられたが、店は続いていくと思っていた。いつかなくなる日は来るかもしれないけれど、ずっと先のことだろうと思っていた。

うまさんがコロナに感染し、後遺症を抱えたことは知らされていたものの、正直閉店につながるほどのこととは捉えていなかった。

コンロの人とバイトだけで店を回すのが基本になるにつれ、うまさんに会う機会も減っていたが、コロナ前からうまさんは会うといつも何となく体調不良なことが多く、やや患っているのがデフォルトみたいな感じが皆の共通認識になってしまっていたような気がする。
2年もの間、廃業を見据えながら苦しんでいたとは思わなかったのだ。だから、それを知らせる文面が送られてきた時は衝撃を受けた。申し訳ない気持ちになった。

そのお知らせの後、また飲み会が開かれ、そこに集まった一人ひとりにうまさんは直接説明をした。切なさと楽しさがごちゃ混ぜになった飲み会だった。