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カレーのような草枕

シリーズ「思い出の味」 第23回


数々の人気店が廃業間際に客が押し寄せ大混乱に陥るのを見ていたうまさんが、それを避けるために考えた幕引きは見事なものだった。通常営業を終えた日に閉店・廃業を告知、その翌日からの最後の1ヵ月は完全予約制で、一度は来店したことがある人と関係者に限定し、狙い通り大きな混乱もなく、閉店を迎えた。

最終日の前の2日間、夜はイベントが開かれた。1日目は、俳優の菊池明明さんが中心となり、演劇・映画上映・音楽ライブ・展示、草枕にまつわる文化祭ともいうべき企画となった。私もじっくりと観たかったものの、2日目は私の講談会をやらせていただくことになっていたので、それに備えるため泣く泣く早めに失礼したのだった。

翌日、営業後の草枕へ。小上がりの席のテーブルに布をかけ、釈台を置くとそこそこ高座らしくなった。いつも寄席に来て下さるお客様と、草枕の仲間が入り混じった客席は、今でも印象深い。

さらにその翌日、ついに草枕は最後の営業を終え、閉店後の店内では、最後の飲み会が始まっていた。

最後とは思いたくないけれど、現時点では最後となる草枕のカレーをじっくりと味わった。『なすチキン辛さ7番』。

うまさんのトレードマークといえば、一体どこで買うのか分からない強インパクト帽子と、首から提げているシワッシワの形状記憶手ぬぐいだが、私の二ツ目昇進時に差し上げた手ぬぐいもあっという間に見事な形状記憶に仕上がっていた。この日もうまさんはその手ぬぐいを提げていた。