NEW

〈書評〉 浪花節の世界 (安斎竹夫 著)

「芸人本書く派列伝 クラシック」 第14回

証言から見えてくる、昭和浪曲界の豪快な裏側

 松平八千代も元は浪曲だったが既に引退済で、現在も存命の松平洋子の母として紹介されている。

 八千代の父は春日金鶴(かすがきんかく)という曲師で、二代目浪花家辰丸などを弾いていたという。その父親に勧められて13歳の時に春日錦を名乗り、一座を組んで千葉県で興行を打ったが、赤字に終わった。この人の話がなかなか乱暴で面白い。

 八千代の後は鼈甲斎女虎になる。初代鼈甲斎虎丸の息子が父のマネジャーをしており、名前を貰ってやるから門下に来い、と言われたためだそうだ。その後は宮川女左近を名乗る。

 宮川左近は堂々たる大看板だが、この時は三代目だろう。名前はその三代目から貰ったわけではなくて、勝手に名乗った。八千代の夫の実父がひどい男で、孫が欲しいが嫁は要らないという態度だったため、夫婦で家を飛び出したのだ。鼈甲斎女虎では居所がわかってしまうので、仕方なく初代宮川女左近を名乗ったのである。当然だがトラブルになった。

 その後どうなったかは気になるところだと思うが、本を見つけたら読んで確かめてもらいたい。松平八千代を名乗ったのは金絡みだそうだ。

 こういう昭和ならではの荒っぽい話がたくさん出てくる。松平八千代以外のインタビューについては、機会があれば実物でお確かめいただきたい。