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〈書評〉 役者の落語はお父さんのカレー (小宮孝泰 著)

「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第17回

落語ならざるものから見える落語

 立川志らく主宰の演劇ユニット「下町ダニーローズ」の、向田邦子原作「あ・うん」公演は、俳優を使った演劇の世界に踏み出したが、落語的な演芸の世界観から抜け出しきれていない例として紹介されている。

 「下町ダニーローズ」の公演は私も何度か観ており、落語とはまったく別物になった狂気性の高い内容のものなどは評価している。「あ・うん」は、自身が演劇に開眼した作品だと志らくが自著にも書いており、世評も高いので、これが採り上げられたことに新鮮な驚きがあった。

 小宮は自身が観劇した回について、親友同士が別れを意識した場面で、その二人が感情を次々と言葉にしていたことに違和感を覚えたことを記している。「もっと役者を信じて欲しかった」が「いつも独りで座布団の上で処理できてしまう志らくさんには、自分の大事な作品を他人任せにはできなかったのかも知れません」と小宮は推測する。

 役者にとって、自分の台詞を言うだけではなく、他人の台詞を聴くことも大事なのだ、という指摘が本書の中には繰り返し書かれている。小宮自身が体験した落語を芝居化した舞台でも、当時二ツ目だった落語家にそれができず、受けに困ったという体験が綴られる。それに通じる「無音の間」の重要性について、小宮はこう書いている。

 ここで挙げた2つの例は、リアクション芸である演劇と、語り芸である落語の違いを端的に際立たせるものとして読むことができる。本書を通読することで、落語ならざるものと落語との間にあるものが浮き上がってくる。その意味で秀逸な落語論になっているのだ。

 この他にも明治大学落語研究会時代の思い出、特にコント赤信号リーダー・渡辺正行に関する逸話などは読みごたえがあるのだが、それは実際の本で読んで笑っていただきたい。

[写真・小宮孝泰、御堂義乗]

(文中、敬称略)

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  • 書名 : 役者の落語はお父さんのカレー
  • 著者 : 小宮孝泰
  • 出版社 :秀和システム新社
  • 書店発売日 : 2026年9月
  • ISBN :9784798076799
  • 判型・ページ数 : 四六判・304ページ
  • 定価 : 2,640円(本体2,400円+税)

(毎月19日頃、配信予定)

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