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〈書評〉 役者の落語はお父さんのカレー (小宮孝泰 著)

「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第17回

〈書評〉 役者の落語はお父さんのカレー (小宮孝泰 著)
杉江 松恋

執筆者

杉江 松恋

執筆者プロフィール

本邦初! 演劇視点の落語論

 本職以外の人が演じる落語を自分から聴きに行くことはあまりない。

 本職というのはつまり、誰かの弟子となり、先達から噺を教わって自分のものとして工夫していくという過程を経た、落語という技芸で報酬を得ることを周囲に認められた演者のことである。それを聴くだけでも手一杯なので、他の人の落語まで顧みている余裕がない、というのが大きな理由だ。

 といっても、落語は専業の落語家だけが演じているわけではない。天狗連(てんぐれん)と総称されるアマチュアがいる。社会人落語家を名乗っている中には、無料ではなくて、有料で観客を入れて会を開く人も少なくなく、その場合はもう職業化していると見るべきだろう。

 アマチュア落語家について考えることを目的とした稿ではないので、ここではその是非については問わないことにする。今回取り上げたいのは、一世を風靡したコント赤信号のメンバーで、現在は主として役者として活躍している小宮孝泰の新刊『役者の落語はお父さんのカレー』(秀和システム新社)である。

 小宮は2011年から、役者が集まって寄席形式で行う〈ごらく亭〉という落語会を年1~2回の頻度で開催している。「らくご」をひっくり返して「ごらく」、そこには娯楽の意味も掛かっているという。

 本書は、その〈ごらく亭〉を始めるまでの前段と会の歴史が綴られる第1章、明治大学落語研究会出身である小宮の落語遍歴について語られた第2章、役者の演じる落語、落語の舞台化について述べた第3・4章、小宮の視点からいくつかの落語が解説される第5章、落語に関する文章や新作台本を集めた第6・7章という構成になっている。

 巻末には「落語と私」の題名で、落語を愛する役者の文章を収録し、それに小宮が一文を書いて応えるという往復書簡の章が付されている。ここに登場するのは、風間杜夫、渡辺正行、ラサール石井、山口良一、松尾貴史の面々である。いちいち説明はしないが、「役者落語」や「明治大学落語研究会」を通じて小宮と関係の深い人々だ。