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〈書評〉 ゾンビ回収婦 (小砂川チト 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第17回

〈書評〉 ゾンビ回収婦 (小砂川チト 著)

仮想世界でゾンビの死骸を拾う女性の孤独と尊厳を描く近未来小説!

笑福亭 茶光

執筆者

笑福亭 茶光

執筆者プロフィール

進化するAIの脅威

第175回芥川賞受賞作! 『ゾンビ回収婦』 小砂川チト著

 AI(人工知能)に仕事を奪われた夫婦。その現実を受け止め、新たな人生を歩むことを早々に決意する夫と、AIへのやり場のない怒りを抱えたまま現実に取り残された妻。

 感情のやり場のない女は、夫の部屋に置かれたVR(仮想現実)ゲームの世界の中に自分の居場所を見つけてしまい……。

 私の独演会の宣伝動画を妻が作ってくれた。

 独演会の会場が「座・高円寺2」なので、高円寺の街を私が自転車で滑走して会場を目指している動画だ。突然、着けてなかった袴を着けてたり、細かい部分でおかしなところはあるが、私はこの動画のために一度も高円寺を自転車で滑走していない。

三遊亭茶光 独演会「ゴールデンドロップ 2027」(クリックすると音が出ます)

 この数年で、AIというのは、恐ろしい完成度のものを作れるようになった。

 すごく酔って記憶がない日なんかに、自分が裸踊りしてるAI動画を見せられたら「俺じゃない!」と、自信を持って言い切ることはできないだろう。私は「裸になるのは30代で卒業したはずなのに……」と、コンプラの時代に合わせられない自分に落胆し、肩を落とすに違いない。

 しかし、AIは冗談ではなく、脅威だ。

 以前、私もメンバーとして加わっている演芸ユニット「ルート9」のYouTubeの企画で「ChatGPTを使って新作落語を作ろう」というのをやったことがある。いくつかの単語を入力すると、三題噺のように、あっという間にあらすじが出来上がる。それに肉付けや辻褄合わせの修正を加えて、1本の落語を作った。

 そのAIで作った落語は、実際の高座で“落語サイボーグ”という異名を持つ三遊亭花金が披露した。AIとサイボーグの夢のコラボ。

ルート9「ChatGPTを使って落語を作ろう!」(YouTube)

 この1回限りで、その後は演じられていない。もちろん内容のクオリティー的に再演するほどでもないというのはあるだろうが、二ツ目とはいえ、我々はプロの芸人なので、みんな心の中に「AIが考えたもんなんかやれるかい!」という矜持があると私は思っている。