〈書評〉 はなしか稼業 (三遊亭円之助 著)
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第8回
- 落語
- Books
杉江 松恋
2025/12/29
忘れがたい落語家
芸人らしく、微笑ましい。
落語家の自伝を読むのが好きで、目についたものはだいたい買って持っている。こどものころに古今亭志ん生『びんぼう自慢』(立風文庫)を読んだのが始まりで、こんな人生もあるのか、と衝撃を受けた。六代目三遊亭圓生『寄席育ち』(岩波現代文庫)、前回紹介した八代目桂文楽『芸談 あばらかべっそん』(ちくま文庫)などが有名で、立川談志も自ら書いたわけではないが、吉川潮を聞き役に立てた『人生成り行き 談志一代記』(新潮文庫)を遺している。古今亭志ん朝は残念ながらまとまった自伝を書かずに逝ってしまった。
そうした大物の作品はもちろん楽しいのだが、そこまでではない落語家の本にも良書はたくさんある。私が好きなのはむしろそちらで、この連載でもおいおいご紹介していこうかと思う。背伸びをしない芸人の身の丈とはこういうものだ、というところを読んでもらいたい。今回取り上げる三遊亭円之助『はなしか稼業』(平凡社ライブラリー)はまさにそういう一冊だ。
自分の流儀でいけば圓之助なのだが、本の標記に従って三代目三遊亭円之助とここでは書く。ほかの落語家についても同様である。巻末の略年譜に即して書けば、1929(昭和4)年東京・大塚生まれ、1956(昭和31)年に三代目三遊亭小円朝に入門し、前座名・朝三、1959(昭和34)年同名で二ツ目、1965(昭和40)年9月三代目円之助を襲名して真打に昇進した。1967(昭和42)年に師匠である小円朝が病に倒れ、翌年そのおかみさんが他界する。その後、1973(昭和48)年に他界するまで円之助は師匠を自宅に引き取って介護に努めた。
三代目小円朝一門は、どういうわけか短命な人が多く、円之助の兄弟子である朝之助も40歳で亡くなっている。立川談志の修業仲間でもあって、『談志楽屋噺』(文春文庫)でもページが割かれて記述がある。円之助の後に入った弟弟子の朝三も1984(昭和59)年に交通事故死した。
1980(昭和55)年に円之助は脳溢血で入院し、林家三平に紹介された伊豆の病院でリハビリ生活を送って1年後に復帰を果たした。しかし1985(昭和60)年4月26日に心筋梗塞で他界してしまう。享年56は、現在の基準に照らし合わせなくても随分若い。ちなみに長男も六代目三遊亭円橘に入門して前座名・橘つきから四代目円之助となり、後に父の師匠である小円朝の名を継いだ。だが2018(平成30)年に49歳の若さで亡くなってしまっている。
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