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手紙 ~拝啓、四十八の君へ~

「噺家渡世の余生な噺」 第11回

手紙 ~拝啓、四十八の君へ~

たくさんの人の「ありがとう」に支えられている(撮影・武藤奈緒美)

柳家 小志ん

執筆者

柳家 小志ん

執筆者プロフィール

一、四十八の君へ

拝啓。
二〇二六年三月十四日、四十八歳になる君へ。

この手紙を読んでいる君は、
あの頃に描いたとおりの人生を歩んでいるだろうか。

小学生の君は、プロレスラーになりたかった。
中学生の君は、教師を志し、
高校生の君は、国際交流を担う“何者か”になりたいと言っていた。

ずいぶんと、忙しい夢の遍歴である。

医療・福祉の現場に身を置いていた頃は、それなりに任される人材でもあった。
あのまま進んでいれば、きっと今ごろは、肩書きのひとつやふたつ、
名刺に増えていたのだろう。

だが、人生は妙なところで曲がる。

あの頃も悩みを抱えながら生きていた。
師匠・柳家さん喬の落語で救われていた。

その後、その師匠・柳家さん喬の弟子になり、
今は噺家・柳家小志んとして生きている。

昔の私を知る者からすれば、想像もつかぬ転身であろう。

少し年を重ねてからの弟子入り志願だった。
あの頃の私は、努力と実力は比例する、と信じていた。

それには若さという“元手”が必要だとは、そのときは知らなかった。

神様が見ていてくれて、誠実に生きていれば、やがて必ず報われる――
そう思っていた。
だが現実は、とりわけ芸の世界は、そんなに甘くはない。