2025年8月の最前線【前編】 (若手講釈師群像・一龍斎貞奈)
「講談最前線」 第5回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/08/13
今、活躍中の一龍斎貞奈(講談協会HPより)
講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。(2025年8月の前編/後編のうちの前編)
言葉の波に乗る ~一龍斎貞奈の新作講釈の力
前座から二ツ目に昇進して、グーンと芸が伸びる人もいれば、方向性が見つけられないでいる講釈師もいる。一龍斎貞奈は、その間にあった人と言えば良いだろうか。
二ツ目になってから、あれこれとアクティブに動いてきたが、ここ最近になって、それが確かな形として現れてきたように思えてならない。一門に伝わる古典ばかりでなく、特に新作や企業向けの話の創作等々、「貞奈の高座だから聴きたい!」という演目が揃ってきたのだ。
先月のこの場でも報告した『長谷川謹介物語』は、台湾縦貫鉄道建設に貢献し、「台湾鉄道の父」と呼ばれた人物の伝記だが、恐らく聴いている人は多くはその人物を知らないだろうという中(かく言う私も、今回はじめて長谷川謹介なる人物を知ったのだが……)、貞奈の読みで、また新たな歴史に光が当たり、その歴史を作った人物に出会うことができた。
貞奈の読みの魅力は、いわゆるリズム感やテンポを活かして、トントンと調子良く読んでいくというより、まずは話の肝をグッと抑えながら、どこを聴いてほしいのかを考え、言葉の強弱や緩急を自在に用いて、話の波を作っていくところにある。演じ手が言葉で作り上げる波に、聴き手を乗せることは肝心だ。
例えば、長谷川謹介の偉業については、調べればある程度のことはわかる。だがその偉業がどうして偉業たるのか、そしてその苦労の裏にはどんなことがあるのか。歴史的事実からは見えてこないが、読み手としては、「この話を前に、こんなことを感じたからこそ読みたい!」という思いを話に反映させることは必要である。
更に、今の貞奈は、そうした自分の眼を通しての「話の魅力」を軟らかな口調で読める力を持っているのも強みである。
同じことが『ジムニー物語』にも言える。実業家であり、自動車メーカースズキの社長を務めた鈴木修による、ジープのミニで「ジムニー」(これも貞奈の高座から知り得た・笑)の開発、そして誕生秘話であるが、開発の前段階から新商品の誕生にいたるまでの経緯について取材を行い、歴史的事実を支える裏話を含めながら、開発に携わった人たちの苦労や苦悩を心地よい波に乗せて丁寧に聞かせた。
だからこそではないが、ジムニーが完成した瞬間、思わず「お~」と声を上げ、拍手をしそうになったくらいだ。
そう感じさせたのは、ストーリー展開の舵を握る読み手の力がある証拠であり、説明にあたる地の文では事実に迫るように緩急を自在に用い、一方で会話のパートでは逆に思いを抑えることで、聴き手それぞれに登場人物の心情を想像させるような読みをしたこと。その結果、ジムニーの誕生と今の時代におけるジムニーの意義までを描き出し得たと言える。
恐らくこの二作はこれから先、読み込んでいくことで貞奈の代表作となり得るだろう。
いま読まれています!
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
シリーズ「思い出の味」 第10回
松鶴、鶴光、羽光、羽太郎の四世代の飲食
~気をつかう師匠との食事
笑福亭 羽光
2025/08/04
シリーズ「思い出の味」 第11回
食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶
~焼肉は落語
桂 笑金
2025/08/17
シリーズ「思い出の味」 第24回
母のカレーと鯨汁、時々“かきのもと”
~食べ物の記憶には、不思議と人の面影が宿る
春風亭 鯉づむ
2026/05/27
シリーズ「思い出の味」 第1回
21900のいただきます
~師匠との食卓
三遊亭 司
2025/05/13
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
「すずめのさえずり」 第十一回
宇宙の前座
~落語家が綴る、スターウォーズにおける師弟制度の妙なリアリティ
古今亭 志ん雀
2026/05/26
シリーズ「思い出の味」 第12回
真夏の甘美
~秋田のドリアンは、恋の味!
一龍斎 貞奈
2025/08/25
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
シリーズ「思い出の味」 第10回
松鶴、鶴光、羽光、羽太郎の四世代の飲食
~気をつかう師匠との食事
笑福亭 羽光
2025/08/04
シリーズ「思い出の味」 第11回
食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶
~焼肉は落語
桂 笑金
2025/08/17
「コソメキネマ」 第十三回
弟子になる
~フランキー堺演じる落語家が活躍する喜劇映画『羽織の大将』をご紹介!
港家 小そめ
2026/05/23
「エッセイ的な何か」 第12回
5月11日は、ご当地スーパーの日 →土地の味を追い求める男の旅情
~ご当地スーパーを巡る旅は予期せぬことの連続である
三笑亭 夢丸
2026/05/24
「マクラになるかも知れない話」 第十回
G.W.にご用心
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいなリズムで笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/05/25
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第23回
日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/31
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
「かけはしのしゅんのはなし」 第12回
5月5日は、自転車の日
~あの時、見えた新しい世界と、今知る父の気持ち
春風亭 かけ橋
2026/05/22
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「座布団の片隅から」 第13回
声優
~話題の人気アニメ『あかね噺』で声優デビューさせていただきました!
三遊亭 好二郎
2026/05/07
月刊「シン・道楽亭コラム」 第13回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト Part.3
~橋本さん亡き後に立ちはだかった超大型の壁
シン・道楽亭
2026/05/10
「浪曲案内 連続読み」 第11回
浦安の風が吹いている
~かつて浦安にあった寄席と浪曲師の物語
東家 一太郎
2026/05/20
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第13回
芸人、変な人多い
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/05/03
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第13回
〈書評〉 未来の大看板がここにいる いま、若手の落語家・講談師・浪曲師が面白い (宮信明 著 / 橘蓮二 写真)
~若手76人の魅力を研究者の視点と写真家の感性で活写した“読む寄席”
杉江 松恋
2026/05/21
シリーズ「思い出の味」 第6回
茶色いうどん
~自分の未来を見つめる8歳の少年
三遊亭 ごはんつぶ
2025/06/25
シリーズ「思い出の味」 第11回
食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶
~焼肉は落語
桂 笑金
2025/08/17
「令和らくご改造計画」
第十話 「オチログ」
~前座が作った落語家レビューアプリ「オチログ」を巡る狂騒。ブラックユーモア満載の笑撃作!
三遊亭 ごはんつぶ
2026/05/15
「くだらな観音菩薩」 第13回
願成就院の毘沙門天
~運慶が作った仏像に心が震えた、きく麿師匠。その一方で…
林家 きく麿
2026/05/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
シリーズ「思い出の味」 第19回
雪のココア
~内弟子時代に憧れた甘い味
柳家 わさび
2026/01/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第7回
世間せまないか?
~落語家を多数輩出する片田舎、神戸の垂水
桂 三四郎
2026/02/01
編集部のオススメ
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第11回
談志師匠の最後の弟子! 立川談吉 改メ 立川談寛師匠真打昇進披露パーティー
~真打昇進披露パーティー体験リポート②
服部 拓也
2026/04/23
シリーズ「思い出の味」 第23回
カレーのような草枕
~自由でゆるくて、どこか芯がある。かつて新宿にあった名店の最後を描く、愛おしい物語
田辺 一記
2026/04/21
シリーズ「思い出の味」 第22回
亡き父の味と、鰻に導かれる名人の味
~人生と落語と鰻の不思議なご縁
三遊亭 あら馬
2026/04/20
「くだらな観音菩薩」 第12回
日光菩薩と月光菩薩
~怒りと笑いを行き来しながら、菩薩様のような優しさに辿り着くコラム
林家 きく麿
2026/04/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「令和らくご改造計画」
第九話 「地獄のモーニングコール」
~落語家は寝すぎ? 働かなすぎ? 前座が仕掛ける“狂気の作戦”とは!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
「講談最前線」 第16回
2026年4月の最前線 【前編】 (講談協会が一般社団法人として始動へ)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/04/11
月刊「シン・道楽亭コラム」 第12回
一粒の麦 ~世界に広がれ、落語の輪 in 名古屋!
~名古屋の演芸文化を支える多彩な人たちの静かな情熱とリアルな声を追ったコラム
シン・道楽亭
2026/04/10
「座布団の片隅から」 第12回
地獄
~春風亭㐂いち兄さん、柳家小はだ兄さん、三遊亭歌彦さんと僕でスキーに行ってきたのだが…
三遊亭 好二郎
2026/04/07
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25