古今東西を自在に読む講釈師 松林伯知(中編②)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第29回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/03/14
幕末史と新選組が導いた「伯知」への憧れ
―― 今回の話の中でも幾度となく登場する「松林伯知」ですが、当代は三代目になります。随分前から、ツイッター(現・X)のアカウント名が「hakuchi97」だったので、いずれ伯知になるんだろうなあとは思っていました。今、伯知系統の講釈師はいませんが、襲名はすんなり進んだんですか。
伯知 二ツ目になって、アカウントを開設してからですので、実は10年間、「hakuchi」だったんですよねえ。誰か気づくかなと思っていましたが、気づいていただいていましたか(笑)。私が9月7日生まれなので、そのアカウントにしました。
幕末明治史、そして新選組を研究していると、伯知の名前には必ず出くわすんですよ。篠田鉱造(しのだこうぞう)の著書を読んでいると、「伯知翁から……」という表現があって、『明治百話』にも出てくる。新選組作品を遡って調べていくと、司馬遼太郎、子母澤寛、そして『新撰組十勇士伝』を創った伯知に行き当たるんです。そこから興味をもっていて。
ただ、学生の頃は講談師というより“やたら何でも詳しい物知りおじいさん”みたいな印象で覚えていて(笑)。幕末・新選組が入口で「伯知」に憧れたわけですが、伯知は「猫遊軒(みょうゆうけん)」を亭号にしていたこともあったので、「猫好きだから、猫遊軒を名乗りたくて伯知を選んだんでしょう」と言われることが多いんですが、猫好きより歴史好きの方が大きいというわけです。でも、伯知襲名に憧れていると実際に話したことがあるのは、前座の頃、伯山兄さんと𠮷沢英明先生に言ってみたくらいでしたかねえ。あとはこっそりアカウント名にするくらいで。
それで真打昇進が決まって、師匠から名前をどうするか聞かれたので、思い切って伯知襲名の話をしたんです。師匠の頭にもあったようなんですが、紅一門だと襲名の例がなかったのと、その前に神田伯山の襲名があって、襲名の許可を得るのが大変であったことをYouTubeなどで伯山兄さんがよく話されていたのを聞いていたので、師匠からは、「まず権利や許可を得るのを自分でなんとかできるのであれば良いよ」ということになりました。
そこで、まずは関係者を見つけるのが先と、「松林」と「伯知」の両方を当たらなければならない。ところがそこは歴史研究者と編集者のなせる業で、資料探しと権利者探しなんていうのはもう日常業務でしたから、よし、まずは「松林」からだと、講談協会会長の宝井琴調先生のところへ相談に伺ったら「よし、わかった!」とその場で関係者に電話であたってくださって、数分後に「大丈夫だって!」って(笑)。講談協会さんにはお世話になりました!
次に「伯知」の資料をたくさん収集していた講談研究家の𠮷沢英明先生をはじめ、研究家の先生たちと連絡をとらねばという時にも、先輩方がさまざま助けてくださいました。ホッとして、本当にありがたかったです。初代のお墓のある寺を尋ねたんですが、柘植家には連絡がつきませんでした。それから二代目伯知を継いだ国井紫香先生にどう当たればいいかと思っていたところ、「そうだ、二代目は映画弁士だった!」と思って、片岡一郎先生(活動弁士)にお尋ねしたんです。そうして二代目のご一族をご紹介いただき、孫にあたる今は「鮒忠」の社長を務めている安孫子さんにお会いしたんです。
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