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和歌山の家族の風景

シリーズ「思い出の味」 第26回

 子供の頃は、何が美味しいのかわからなかった。大人になった今も、美味さはまったくわかりませんが、コレが出てこないと寂しい。大量に作れて、そこそこ日持ちがいい。だから母としては都合がよかったのでしょう。でも、食卓にコレがあるとテンションが下がった記憶があります。

 そういえば一度だけ、母に料理についての文句を兄と一緒に言ったことがありました。その日、母はうんうんと聞いてくれましたが、次の日、母は丸一日料理を作ってくれませんでした。お弁当もナシ。学校で切ない思いをしたような記憶が。

 おかーさま、あの時はすみませんでした。

夏を告げる青い旗

 和歌山らしいエピソードがないなあ。梅は嫌いだし……。

 幼稚園の頃に母から急に「口を開けて、目をつぶってみろ」と言われ、そのようにしてみると、母が口の中に梅干しを何個かぶち込んだんです。それから大嫌いなんです。

 何かあるかな? そうだ。ヒジキだ!

 私の実家は海のすぐ近く。漁師町なんです。魚釣りとか歩いて一分ほどでできる距離です。なんとなんと岩場でヒジキが採れるんです。ヒジキとは? どんなんかは調べてくだされまし。

 ただ年中取れるわけでもなく、夏前に解禁日があるんです。近所のオバチャンがいっぱい岩場に鎌を持って集まるんです。そして時間になったら漁協の船が岩場の近くに来て、大漁旗みたいなのを掲げる。そしたらヒジキ狩りがスタート。

 自分の陣地でヒジキを刈る。刈り終えたらアスファルトの道端にござを敷き、ヒジキを一週間ほど外干しする。ある程度乾いたら、自分の家のカマドの火で炙る。そしてもう一回外干しする。そしたら乾いてパリパリになるので、保存しておく。

 味は? 美味いに決まっています! 本当にヨソのヒジキとは比べ物になりません。名産などではなく、自分の家庭で食べるだけで手間もかかるけど、昔から伝わる……というのも侮れないもんですよ。

 思い出の味は、こんな感じですかねえ。少しでも楽しんでいただけたなら何よりです。読んでいただき、ありがとうございました。

かしの木ルーブルInstagram

(文中、敬称略)

三門綾 Instagram

(了)