和歌山の家族の風景
シリーズ「思い出の味」 第26回
- 浪曲
三門 綾
2026/08/05
子供の頃は、何が美味しいのかわからなかった。大人になった今も、美味さはまったくわかりませんが、コレが出てこないと寂しい。大量に作れて、そこそこ日持ちがいい。だから母としては都合がよかったのでしょう。でも、食卓にコレがあるとテンションが下がった記憶があります。
そういえば一度だけ、母に料理についての文句を兄と一緒に言ったことがありました。その日、母はうんうんと聞いてくれましたが、次の日、母は丸一日料理を作ってくれませんでした。お弁当もナシ。学校で切ない思いをしたような記憶が。
おかーさま、あの時はすみませんでした。
夏を告げる青い旗
和歌山らしいエピソードがないなあ。梅は嫌いだし……。
幼稚園の頃に母から急に「口を開けて、目をつぶってみろ」と言われ、そのようにしてみると、母が口の中に梅干しを何個かぶち込んだんです。それから大嫌いなんです。
何かあるかな? そうだ。ヒジキだ!
私の実家は海のすぐ近く。漁師町なんです。魚釣りとか歩いて一分ほどでできる距離です。なんとなんと岩場でヒジキが採れるんです。ヒジキとは? どんなんかは調べてくだされまし。
ただ年中取れるわけでもなく、夏前に解禁日があるんです。近所のオバチャンがいっぱい岩場に鎌を持って集まるんです。そして時間になったら漁協の船が岩場の近くに来て、大漁旗みたいなのを掲げる。そしたらヒジキ狩りがスタート。
自分の陣地でヒジキを刈る。刈り終えたらアスファルトの道端にござを敷き、ヒジキを一週間ほど外干しする。ある程度乾いたら、自分の家のカマドの火で炙る。そしてもう一回外干しする。そしたら乾いてパリパリになるので、保存しておく。
味は? 美味いに決まっています! 本当にヨソのヒジキとは比べ物になりません。名産などではなく、自分の家庭で食べるだけで手間もかかるけど、昔から伝わる……というのも侮れないもんですよ。
思い出の味は、こんな感じですかねえ。少しでも楽しんでいただけたなら何よりです。読んでいただき、ありがとうございました。
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(文中、敬称略)

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(了)
こちらもどうぞ。浪曲師・天中軒景友さんが思い出の味を綴ったエッセイ
杉江松恋さんの月例浪曲レポート(北関東に浪曲王国を築けるか・三門綾)
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