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鍋で炊きゃ そこらの米も ゴチになる

「朝橘目線」 第16回

 我が五代目円楽一門会の興行などでお囃子をしてくださる、鶴田弥生お師匠さんも先日、楽屋でこぼしていた。食事中に粗相したのではない、愚痴の方だ。

 「ご飯のことを米って言うのおかしいし、大事なお米なんだから“御”の字をつけたらどうなの」

 お師匠さんの仰る通りだ。先だっての米騒動しかり、お米がないとどれだけひどい目に遭うか、重々承知のはずだ。命の親を「米」呼ばわりとは、不敬にもほどがある。そういう考え方、私は好きだ。

 弥生お師匠さんは信用できる。まず私の芸を褒めたことがない。これは信頼の証だ。褒める奴は敵だ、と柳家小三治師匠も仰っていた。

 弥生お師匠さんは、なんならうちの圓橘も褒めない。というか誰も褒めない。毒舌が着物着て三味線弾いてるようなお方だ。怖いから、さっきからずっと“お師匠さん”と、師匠に「お(御)」の字をつけている。

 我が家ではお米を、鍋で炊く。

 炊飯器を置く場所がない、買う金もないからね。妻らしき女性が時折、私に皮肉を言うが、むしろ鍋で炊く方が良いと思っている。今の炊飯器にはあれこれ機能がついているらしいが、私に言わせればそれは、退廃のごときものである。

 火・水・米。曜日ではない。この三要素をどう見極め、扱うか。炊飯には実に奥深い、炊飯道とも言うべき世界がある。

 まずお米。これは必ず、冷蔵庫で保管してほしい。お米は生鮮食品だ。特に夏場は、常温保存などもってのほかである。研いだお米を鍋に入れ注水、冷蔵庫に置いて浸水する。キンキンに冷えた状態で、強火にかけるのが良いんだそうな。氷を入れる人もいると聞く。

 強火で加熱して、沸いたら弱火に落として10分、火を止めて蒸らしに10分。浸水1.5時間くらいとして、約2時間で炊き上がる。

 三要素の見極めと先ほど述べた。火は簡単だ。コンロのつまみを動かすだけで良い。問題は米と水。これは連動している。肝心なのが水加減。もうこれがほぼ全てと言って良い。基本はお米1合に対し水200mL。が、それはあくまで目安である。お米の品種、その日の湿度、精米してからの日数、自分の好みで。様々な要素で水量が変わってくる。