NEW

VR演出の効果

「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第15回

VR演出がもたらす物語への没入感

 そこで有効に働くのが、自分のやっているVR(実体験に近い体験が得られる仮想空間)の落語会である。寄席へ行くという疑似体験を挟んでいる分、「演芸を楽しむぞ」という空気感がそこにはある。

 目の前で、リアルにパフォーマンスをしている演者の息遣いを感じることができる。VRだからこその演出を凝らしたパフォーマンスを行うことができる。

 先日、自作の怪談『鏡』にパーティクル(光の演出)を入れた興行を行った。

 まず入場者には全員、手鏡を持ってもらう。面白い演出である。話が進んでいくと、主人公の貞操が奪われるというセンシティブなシーンがある。そこで花が散るような派手な演出を入れると同時に、鏡の中には鬼の面を映す。お客様は派手な演出に気を取られ、すぐには手鏡の変化に気がつかないという趣向だ。

 終盤、「慌てて手鏡を取る。そこには母親の姿が映っていた。満面の笑みをたたえて」というセリフに合わせて手鏡を覗き込むと、客席から声が上がる。

 暴力を振るうひどい母親。その母親の残像から逃れようと嫁ぎ、幸せを手に入れたはずが、結局、人の因果はそう簡単には断ち切れないという話である。

 自分もいつしか、あれほど忌み嫌っていた実の母親と同じ姿になっていた。その恐ろしい事実に気づくというサゲが、手鏡を用いた演出によって、より鮮烈に浮かび上がるのである。