NEW

VR演出の効果

「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第15回

対極の演出

 先日、友人Kさんのパーティクルライブに参加した。

 彼女の行うパーティクルライブとは、全身にトラッキング装置(体の動きを測定する装置)をつけた状態で、武具や光の演出を駆使して、曲に合わせて踊るライブである。

 普段、Kさんには演出でタッグを組んでいる方がおり、賑やかで華やかで美しい視覚演出が施されている。しかし、その日の公演は一味違っていた。

 刀一本、炎の演出のみ。

 演目は、『深淵の焔』。

 扉が開かれると、観客は自分で中に進んでいく。声が反響する和室のようだが、暗くて辺りはよく分からない。誰かがそこにいたような不気味で神聖な雰囲気もある。

 音の広がりや、方向性を生かした演出も効果的である。彼女が観客の周囲を歩けば、その動きに合わせて声の聞こえる方向も変化し、時には背後から語りかけられるような感覚を味わうことができる。

 目を閉じ、彼女の言葉にただ耳を預ける。そんな時間もまた、心地よいものである。いつもの派手な演出は一切なく、暗闇の中に静かに炎が揺らめく。その柔らかな光が、心地よい空間を生み出している。

 VRといえば、空を飛んだり、血を飛び散らしたり、現実では実現し得ないような派手な演出が可能である。しかし、あえてその逆を行く。演出を削ぎ落とし、静寂と暗闇によって観客の感覚を研ぎ澄ませる。

 これは私にとって、盲点であった。

 VRでも観客に余白を持たせる芸を魅せることができる。新しい可能性を感じた。