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カレーのような草枕

シリーズ「思い出の味」 第23回

カレーのような草枕

今も思い出す、懐かしい味と、かけがえのない時間の記憶

田辺 一記

執筆者

田辺 一記

執筆者プロフィール

「curry 草枕という新宿のはずれにあるカレー屋でした」

店のXアカウントのプロフィール文がいつの間にかそうなっていた。
閉店の年の11月、ニューヨーク・タイムズスクエアのゴーゴーカレーに行ったら、そっちも閉店してた、という店主のポストから遡っていくと、閉店・廃業周りのあれこれ、もっと遡ると、通常営業の頃の淡々としたお知らせなどが現れる。

そうか、今はこういう残り方があるのか、と思った流れで、そういえば、と思い出した今井次郎さんのアカウントを久しぶりに検索してみると、あった。

ミュージシャン、パフォーマー、造形作家であった今井次郎さんは、晩年、入院されている間、ずっと病院食アートを作られていて、その膨大な写真は「JIROX MEALS」という本になった。もちろんお行儀はよろしくないが、自由でいて、どこか緻密で、病と闘いながらも衰えることを知らない創作意欲に圧倒される。

2012年11月に亡くなったが、その最後のつぶやきは、
「寝てた。寝ます。おやすみなさい。」

閑話休題、「curry 草枕」の話。

私が草枕でアルバイトを始めたのは、記録を見ると、2013年8月からだった。
どのように草枕を知ったのか、はっきりした記憶はないが、どこかしらでちらほら名前を聞いて、何となく知ったような気がする。
初めて食べた草枕のカレーは、「初めて食べたカレー」だった。
言い換えれば、「食べたことのないカレー」。
草枕のカレーが好きだった人はきっと皆、最初に食べた時には同じことを思ったのではないだろうか。