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〈書評〉 どうせ世界は終わるけど (結城真一郎 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第12回

〈書評〉 どうせ世界は終わるけど (結城真一郎 著)

終末へ向かう世界で希望を紡ぐ人々の物語

笑福亭 茶光

執筆者

笑福亭 茶光

執筆者プロフィール

別に殺されるわけじゃない

 百年後、直径二十二キロの小惑星が地球に衝突するというニュースが世界中を駆け巡る。百年後の地球の滅亡がほぼほぼ確定している世界の話。

 百年後という決して遠い未来ではないが、自分の一生よりは先の未来に訪れる滅亡。人間は滅亡が確定している世界で希望を見出して生きることができるのか?

『どうせ世界は終わるけど』 (結城真一郎 著)

 演芸写真家の橘蓮二さんのスタジオにはびっしりと小説が並んでいる。

 無類の読書家でもある蓮二さんに教えてもらい、タイトルと設定が私の好みにどストライクだったため、すぐさま本屋に買いに行った。

 どうせ世界は終わるけど――。

 一見、夢も希望もないネガティブなフレーズに聞こえるが、すごく前向きな言葉として受け取ることもできる。

 人前に出て落語をするのは、やりたくてやっていることとはいえ、プレッシャーがかかる。ましてや、大会やテレビの収録となると、緊張はマシマシのメガ盛りになってしまい、若手の皮をかぶったおじさんは楽屋に用意された唐揚げ弁当を前に、この世で最も需要のないものの一つ、『おセンチおじさん』へと成り下がる。

 大ぶりの唐揚げたちがおセンチおじさんに語りかけてくる。

 「おい、おじさん、ここは若手の楽屋だぜ? 若手って知ってるか? 俺たちをペロリと平らげて本番に向かう奴らのことだよ!!!」

 唐揚げたちに詰め寄られ、『ここは俺なんかが来る場所ではないんじゃないか?』と、胃の辺りをさすりながら狼狽えてしまう。

 そんな時は、私はいつも心の中でこう唱えて平常心を保つようにしている。

 『別に(失敗しても)殺されるわけじゃない』

 後ろ向きに聞こえるが、とても前向きな言葉だ。

 いや、失敗してチャンスを逃してしまっては芸人として死んでる状態かもしれないが、実際に命まで失うわけではないと思えるといくらか気持ちがマシになる。

 感情のコントロールは芸人にとってとても大切だ。

 「ほら、少しは胃に入れてから、本番に向かいなよ。別に殺されるわけじゃないんだから」

 弁当の隅っこにいる高野豆腐が話しかけてきたら、私はもう大丈夫だ。