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優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第19回

優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)

真打昇進時、師匠田辺一鶴とともに(田辺一邑・提供)

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

手探りの稽古

一邑 何だかよくわからない(笑)。それ以前に、どうしていいかわからなかった。今と違って小屋が本牧亭と永谷の演芸場ぐらいで勉強の場もなかったですし、よそのご一門の先生のところに勉強に行くこともほとんどできませんでした。協会全体が後進を育てようという雰囲気ではなかったんです。

一邑 『三方ヶ原軍記』と『秋色桜』は教わりました。あとは「本は貸してあげるから」と言われたんですが、ぐちゃぐちゃでその本がどこにあるかわからない(笑)。講談大学で、話の素材として受講者に雑誌をコピーしたものを配っていたんですが、それを参考にしたり、国立演芸場の図書室、昔は書庫に入れてもらえたんですが、そこで講談本を見たりして自力で話を作るしかありませんでした。

一邑 誰かに稽古をつけたかったのかも知れませんね(笑)。

はとバスガイドでの修練

一邑 そうです。若州兄さんはそれで食いつないでいました。バスツアーには定期と主催という二種類あって、主催は人数が集まらないと催行しないんですが、定期は路線バスと同じ定義なので一人でもやる。当時、講談師のコースは定期扱いで、必ず行かなければなりませんでした。私の最低人数は御夫婦一組、いちばん辛かったのは日本語がわからない韓国人三人のみという時でした。

一邑 鍛えられます。話を繋がなければならないので、目に入るものを何でも話題にします。渋滞した時は時間が延びてなおさら大変。おかげで話芸の鍛錬になりましたし、東京の史跡にも詳しくなりました。あとは永谷商事さんが主催していた散歩ツアーも、こちらがコースの企画も出せたりしたのでいろいろ考えました。