紀州、 片棒、 つる
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第五回
- 落語
林家 はな平
2025/09/06
十四席目 片棒 (かたぼう) ★★
[ワンポイント]
お葬式を題材にしていると聞くと重く感じるが、『片棒』はその真逆だ。不謹慎さを笑いに変えるのが、この噺の肝である。ケチな父親の価値観が、最後の一言にぎゅっと凝縮され、思わず笑ってしまう構造になっている。
◆【あらすじ】
良く言えば倹約家、悪く言えばケチな赤螺屋吝兵衛(あかにしやけちべえ)。三人の息子の誰に跡を譲ろうか決めるため、三人の出す自分(吝兵衛)の葬式の出し方を聞こうと思い付く。
長男の案。盛大な弔(とむら)いで、料理も一流、お土産や車代まで出し、葬列者は二千人を呼ぼうということだったため、呆れて却下。
次男の案。色っぽい弔いで、出棺の行列の先頭は頭(かしら)連中の木遣(きや)り、続いて芸者の手古舞(てこまい)、山車(だし)、神輿(みこし)を出す。終いには、花火を打ち上げ、賑やかな弔辞も披露する。呆れて却下。
三男の案。ごく質素な弔いをやる。これは見どころがありそうだと詳しく聞くと、通夜の食事は家の余り物を、葬儀の時の棺桶はどうせ燃やすから菜漬けの樽を使うと、お金のかからないものばかりで感心するが……
◆【オチ】
三男 「荒縄で結んで天秤棒(てんびんぼう)を通し、人足を雇うと金がかかるので、先棒(さきぼう)は私が担ぎますが、さすがにもう一人は人足を雇って」
吝兵衛 「いやあ、そんな無駄な金を使うことはない。片棒はお父っつぁんが担ぐ」
◆【解説】
ケチな人はどこまで行ってもケチなわけで、それがオチに集約されている。私も自分の葬儀では、司会を務めたい。
この『片棒』だが、落語をやっているというより、歌を唄っている感覚になる噺である。フレーズの応酬が続き、次男に至ってはお祭りの鳴り物を表現したり、花火を上げたり、弔辞まで読む。歌詞を追っている感覚になる。
歌い上げるので少し硬いお客様でもウケやすい。なので、若手のコンクールでこのネタが出ることは多い。印象に残りやすいからだ。私も、二ツ目になりたての頃は、この噺を振りかざしていた時期がある。「困った時の片棒」だと思っていた。
一度、この噺を葬儀場のイベントでやったことがある。終活イベントの一幕で、「この落語をやってほしい」と依頼があった。私はどんな仕事でも基本的には断らない主義なので、喜んで出掛けた。
「この落語は、葬儀をおかしく描いていて、現代感覚からすると少し不謹慎に思われるかもしれませんが、不謹慎を笑いに変えるのも落語の真骨頂です」と、それらしいことを言いながら始めた。
しかし、私のめくり(芸名が書いてある紙)の代わりに使われていたのはお位牌だった。その葬儀社は私の上を行っていた。
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