不動坊、抜け雀、七段目
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第9回
- 落語
二十七席目 『七段目』(しちだんめ) ★★★
◆【あらすじ】
芝居好きの若旦那。いつも芝居小屋に入り浸っている。そして何をやっても芝居がかりになってしまう。
今日も、お使いから帰ってきた若旦那。帰ってくるなり、芝居の真似事(まねごと)で返答をする。呆れた旦那は二階へ追いやるが、今度は芝居口上の真似事を始める始末。旦那は丁稚(でっち)の定吉(さだきち)に止めさせるよう命じる。
芝居に夢中の若旦那に、定吉が「見れば、家内に取り込みごとのある様子……」と忠臣蔵の六段目の台詞で呼びかけると、喜んで部屋に引き入れる若旦那。どうやら、定吉も芝居好き。
このまま二人で芝居をやろうという話になり、忠臣蔵の七段目『祇園一力(ぎおんいちりき)の場』の、お軽を定吉、平右衛門を若旦那がやることになる。赤い長襦袢(ながじゅばん)に手拭いを姉さん被りにする定吉、若旦那は武家役なので刀を帯に差す。
芝居が始まって、いよいよ七段目のクライマックス。若旦那の「その頼みというはな……」に嫌な予感を覚える定吉。「妹! そちの命は兄がもらった!」と、若旦那が刀を抜いて定吉を斬ろうとすると、慌てて逃げ出した定吉は階段から足を踏み外して転げ落ち……
◆【オチ】
旦那 「定吉、しっかりしろ!」
定吉 「はぁ、私には勘平さんという夫のある身……」
旦那 「馬鹿野郎、小僧に夫があってたまるものか。お前はなんだな、うちの馬鹿野郎と二階で芝居の真似事をしててっぺんから落ちたな」
定吉 「いいえ、七段目」

◆【解説】
もともとのオチは「七段目をやって落ちたな」「いいえ、てっぺんから」だったらしいが、やはり最後に七段目と言った方がしっくりくる。
上方版と江戸版では、噺の中に出てくる芝居のパロディが違うが、どちらも三味線や太鼓が入る、いわゆる“音曲入り”の噺でとても賑やかである。若旦那が家に帰ってきた途端に、色んな芝居の場面を繰り広げるが、もちろんお客様がそれを全部知っていなくても構わない。若旦那が一人で悦に入って歌舞いている様を笑ってもらえば良い噺だ。
この噺、私は前半をばっさりとカットした。前半に若旦那が帰ってくる前に、旦那と番頭が若旦那の芝居好きについて話し合う場面がある。「せがれ(=若旦那)が先日、こんな場面で芝居の真似事をしていた」という話を旦那がするのだが、そこで旦那がかなり芝居を語ってしまうのである。これから若旦那に小言を言うのに、旦那の方が芝居好きじゃないのかとさえ思える。
そこで私は、この場面を一切やらなくして、いきなり若旦那が帰って来て、芝居台詞を展開するようにした。それによって、若旦那の登場から一気にギアを上げてスタートを切れるようになった。前半に旦那が芝居を語りすぎると、若旦那の登場のインパクトが弱いのだ。
全編を通して、芝居のパロディが散りばめられていて、若旦那がふざけ続ける短距離走のような噺だ。芝居好きの私が入れたクスグリもある。番頭が黒子の衣装を着ていたり、定吉が階段から落ちて来た時にツケを打たせたり、番頭にスポットライトを当ててみた。遊び心がふんだんに詰まった噺である。
落語家には芝居好きが多い。そんな芝居好きが集まって「鹿芝居(しかしばい)」なるものをやっている。この『七段目』の世界観そのものだ。そんな鹿芝居を観たい方は、ぜひこちらをチェックしていただきたい。

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令和鹿芝居 2026 新春公演
髪結新三の巻
(六代目金原亭馬好襲名奮闘公演)
- 日程・場所:
- ①2026年1月22日(木)
- 昼の部 15:00開演
- 深川江戸資料館 小劇場
- ②2026年1月22日(木)
- 夜の部 19:00開演
- 深川江戸資料館 小劇場
- ③2026年1月23日(金)
- 夜の部 18:30開演
- 池袋演芸場
- 料金(各公演共通):
- 前売3,000円 当日3,500円
- 番組(各公演共通):
- 第一幕 演芸と『髪結新三・上』
- 金原亭馬好
- 第二幕 鹿芝居『髪結新三・下』
- 配役(各公演共通):
- 志ん雀 新三
- 緑也 勝奴
- はな平 源七
- 馬好 お熊
- 花ごめ かつお売り
- 鶴枝 車力の善八
- 琴凌 家主長兵衛
- 市寿 家主女将
- ツケ 令和鹿芝居
- 下座 田村かよ
- ご予約:
- ・カルテットオンライン(当日精算)
- →チケット予約フォーム
- ・カンフェティ(事前決済/発券)
- →1/22 深川江戸資料館(昼/夜)
- →1/23 池袋演芸場
- ・電話予約 090-8170-8152(おかめ家)
▼林家はな平 公式Webサイト
(毎月6日頃、掲載予定)
―― 林家はな平『オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?』シリーズ連載一覧