〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【後編】
掲載記事300本記念
- 落語
話楽生Web 編集部
2026/01/27
まっとうな芸を磨く
世の中の変化に合わせ、落語家も落語も変化を強いられる時代。2025年12月15日、柳家さん喬師匠、五街道雲助師匠、春風亭一朝師匠による「前座噺の会」が開かれた。そこでさん喬師匠は、マクラで、次のようなことを話したという。
「今の前座で髪の毛を短くしている人は、一人もいません。いや、短くしなきゃいけないってことではないんです。みんな長髪です。見れば誰もが落研みたいな感じでしか受け取ることができないんですね。
だけど、私たちが前座の頃と、今の前座さんとでやることに格差があるかというと……ないんです。だから前座の根(ね)というのは変わっていないんです。服装なんかはともかくも、前座の根が変わってないっていうことは、落語家の根が変わってないということだと思うんです。それが一番大事ですよね」
同年10月、さん喬師匠が文化功労者に選出された際、東京・台東区の落語協会2階で会見が開かれた。私も取材者の一人として、駆けつけた。
その際、さん喬師匠は、数多の落語家を通して受け継がれて来た落語の将来への楽観を口にしていた。
「幹を枯らさなければ、次の世代が枝葉を伸ばしてくれるし、花を咲かせてくれる。過去もそうでした。今もそうです。新作という花が咲いている」
幹を枯らさないために奮闘する落語家の身体は、落語を次の世代に伝える“落語メディア”でもある。「まっとうな芸を磨く」ことを実現するために落語人生を生き続けているさん喬師匠は、“落語メディア”の第一人者として「親には感謝ですね」という強靭な喉の強さで、日々複数席をしゃべる。

また、芸人として高座に上がる一方で、落語協会会長としても多忙な日々。
「雑用、多いですよ~(笑)。事務局から『会長としてのコメントを求められています』と言われて、原稿を書いたり。冗談じゃない、高座で『意地くらべ』をやらなきゃいけないのに、って」
年末に入院にされたが、大事を取ってのもので、年明けには無事退院となり、高座復帰を果たされました。“落語界の顔”として、落語界の象徴的存在として、無理をすることなくお元気で。
掲載300本記念インタビューは、これにてお開きです。

(一部、敬称略)
渡邉 寧久(わたなべ ねいきゅう) 演芸評論家・エンタメライター。栃木県宇都宮市出身。新聞社文化部記者、テレビ局エンタメウェブサイトの記者・デスクなどを経て現職。文化庁芸術祭の審査員を委嘱されたことをきっかけに、数々の演芸賞の審査に関わる。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞、花形演芸大賞の選考委員などを歴任。台東区が主宰する「江戸たいとう芸楽祭」(名誉顧問ビートたけし)の実行委員長を務めている。執筆・監修本に『落語家になるには』(ぺりかん社)、『落語入門』(成美堂出版)、共著に『十八番の噺 ―落語家が愛でる噺の話』(フィルムアート社)がある。「東京新聞」、演芸ウェブメディア「話楽生Web」等に連載多数。2025年8月より、東京新宿二丁目のミニ演芸場「シン・道楽亭」の運営にもかかわっている。
(了)
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