講談界を駆ける一鶴イズムの継承者 田辺銀冶(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第24回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/02/03
二ツ目直前で「逃げ出したい」
―― 稽古は一対一ですか。
銀冶 子どもの頃は相対で、家に来てくれて、そこで稽古をしました。
―― 一時期、そんな姿が注目されてメディアで取り上げられていたのを覚えています。
銀冶 ちびっ子講釈師として取り上げられました。師匠はセットで売り出すのが好きで、私の時はダイスケ君とセットにして、テレビやラジオに売り込みをしてくれて、密着取材を受けたりするんですが、私は何しろ恥ずかしがり屋で……。

―― 今からすると、そうは思えませんが(笑)。
銀冶 シャイなんですよ! でも、お客さんのおじいちゃん、おばあちゃんたちが涙を流して喜んでくれて嬉しかったし、6年生までは楽しんでやっていました。
―― その頃に転機が訪れた……。
銀冶 中学生になると思春期を迎えるでしょう。同級生は誰も講談を知らないですし、講釈師も大人ばかりですし、なんだか講談をやっていることが恥ずかしくなってしまって。でも、誰にもそのことは言えませんでした。
そうして高校に進学したんです。親しかった友人が進む高校に一芸試験があって、講談が使える!って、そこの日本文化コースに。それに勉強はしたくないけど、セーラー服を着たかったんですよ。とんだ不届者ですよね(笑)。
―― 銀冶さんのターニングポイントになるその時に、一鶴先生は何か言わなかったんですか。
銀冶 講談協会は15歳から入れることもあって、「芸の道は、入るなら早い方がいいんだ」と言われたので、その時から前座修業を始めました。
―― 昼間は学校がありますよね。
銀冶 昼席には出られませんから、学校が終わってから、お江戸日本橋亭へ行って。あとは日曜日や祝日学校が休みの日に楽屋修業をしていました。
―― 3年間ずっとそういった感じですか。
銀冶 3年間ですね。最後に立前座(楽屋の一切を取り仕切る一番古株の前座)にまでなって、いよいよ二ツ目が見えてきたという時に、「逃げ出したい」と思ったんです。
―― その頃の銀冶、当時は「田辺小むぎ」でしたが、高座や前座としての動きを見ていると、心ここにあらずと言うか、どこかやさぐれていたと言えばいいか……。
銀冶 合ってます(笑)。この先、進路をどうするといった段階で、やりたいこともないし、やりたい仕事もないし、どうしようかなと思って、夏ごろに「大学へ行こうかな」とも思いましたが、受験のための努力が嫌で。
そうしたら知り合いが「あなたには海外の星がある! 海外に行きなさい」と言ってくれて、海外に逃亡したんです。
―― それも運命ですね。
銀冶 私は好きなこと以外には努力はしないんですが、石橋を叩いても渡らない性格なんです。それに日本が好きで、家が大好き。それでも逃げ道はこれしかないと。
母親が心配して、方角を見てくださる先生のところを訪ねました。温暖なオーストラリアがいいなと思っていたら、その先生は「オーストラリアは方角が悪い。ニュージーランドか、パプアニューギニアにしなさい」って、まさかのパプアニューギニア(笑)。
それで旅行会社で働いている友人に相談したんですが、パプアニューギニアは治安が良くないから、ニュージーランドがいいということで決めました。
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