古今東西を自在に読む講釈師 松林伯知(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第27回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/03/12
伝統芸能へ――寄席通いが始まるまで
ここで挙がる一龍斎貞水の「響談」は、コナミデジタルエンタテインメントによる『SILENT HILL 4 -THE ROOM』の特典として収録されたもので、「ぬけられぬ雨の吉原」という演題が付いている。貞水の遺したインタビューを読むと、ゲームのために作ったもので、それもスタジオで喋りながら仕上げていった作品という。
また「談志・圓鏡の歌謡合戦」は音にも残されているが、立川談志と月の家圓鏡(八代目橘家圓蔵)両師匠によるナンセンスなやり取りが人気の伝説とも言える番組である。
そんな数々の音に囲まれた三代目伯知は、水戸の生まれ。出身校は水戸城内にあるというから、まさに歴史に囲まれて育ったといってもいいだろう。お話を聞くのが好きだという伯知が、東京に出て来て進んだのは、女子大の史学科。そこでの人との出会いや伝統芸能との出会いがその後の人生に大きな影響を与えたといっても、これまた過言ではないだろう。
伯知はその間に、何を学び、何を得たのだろうか。
―― 水戸ご出身となると、やはり風土的には水戸が栄えたように、歴史が好きな人が多いのではと単純に思ってしまうのですが、そうした環境にあって、影響を受けたという感覚はありますか。
伯知 古い物が好きで、本でも歴史物が好きで、徳川家に関する資料や史跡も周りにあって、長く弓道部に籍を置いていました。水戸には水府日置流(すいふへきりゅう)という流派があって、「お前たちはその流派を受け継いでいるのだから、水戸藩の武芸をしっかりとやらないといけない」と言われてきました。水戸藩の士風を叩き込まれる平成の女子中学生です(笑)。
歴史でも「金子孫二郎先生の思いを受け継げ」と言われても、「金子先生って誰だろう」と思っていましたが、あとになって凄い人なんだと思いました。
―― 女子高から東京の大学、それも女子大の史学科に進学をしましたが、どんな大学生時代でしたか。
伯知 同じような人しかいなかったので、とにかく楽しかった。最初のオリエンテーションの時に、西洋史希望の人から「歴代ローマ皇帝の中で誰が好き?」と自己紹介より前に聞かれて、いいなあって思いました(笑)。
―― 私は国文科に進むんですが、やはり女子から「私は有島武郎と心中できたらいいと思うの。瀧口君はどんな女性作家とならそうなってもいいと思うの?」と聞かれて、いいなあと思いました(笑)。
伯知 専門が違っても、その専門の話が聞けるのが楽しかったですね。大学では狂言研究会に所属していました。野村萬斎(のむらまんさい)先生が顧問で、ご一門の先生方にお稽古をつけていただいて、狂言の舞台に年に1~2回出ていました。狂言の勉強になるかなと、歌舞伎や大衆演劇、寄席に行くようになりました。扱っている題材の多くは昔の歴史に関することなので、伝統芸能にのめりこんでいきました。
次回の〈中編①〉では、学芸員や研究者を志していた伯知が、落語雑誌の編集部を経て講談師になるまでの異色の道のりをインタビュー。『笑芸人』『落語ファン倶楽部』で名人の音源を聴き比べ、取材と構成に明け暮れた日々が、やがて講談との出会いにつながっていく。歴史研究、狂言、編集経験が一つに結びつく瞬間が興味深い。
(以上、敬称略)
▼『猫遊軒』講談師 松林伯知公式HP
▼松林伯知 X
●近々の予定

伯知の講談忍法帖
昭和百年・特撮の巻
- 日程:
- 2026年3月21日(土)
- 開場 17:00 開演 18:00
- 会場:
- お江戸 上野広小路亭
- (台東区上野1-20-10)
- →Googleマップ
- 出演:
- 桂しん華
- 桂夏丸
- 瀧川鯉朝
- 藤本芝裕
- 松林伯知『円谷英二』他一席
- 座談:特撮トーク
- 料金:
- 予約 1,500円 当日 2,000円
- 予約:
- メール
- →kodan@hakuchi3.com
- ※公演名、人数、フルネーム、電話番号をお知らせください。
(中編①に続く)
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